政府がシェアリング・エコノミーの市場規模把握に乗り出しました。フリマ・アプリなど従来のGDP(国内総生産)の概念ではカバーできない経済活動をGDPに取り込むことが目的です。
今のところ5000億円の市場規模がある
従来のGDPの定義では、中古品の売買は新しい付加価値を生み出したわけではありませんから、仲介事業者が稼ぐ手数料以外はGDPには反映されません。フリマ・アプリなら、メルカリが受け取る手数料はGDPに反映されますが、売り手と買い手のやり取りはGDPの対象外でした。
社会があまり成熟していなければ「新しい付加価値=新しいモノ」という考え方で問題ありませんが、成熟社会ではそうはいかなくなります。
中古品を買った人は明らかに経済学で言うところの「効用」を得ていますから、これを放置すると実際の経済活動とGDPとの間に乖離が生じることになります。
ここ数年、シェアリング・エコノミー企業が急成長してきたことから、専門家の間から、この問題が指摘されるようになっていましたが、今回の市場規模把握は、このギャップを埋めるための第一歩ということになります。
調査では、シェアリング・エコノミーについて、①スペースを貸し借りする事業(民泊など)、②中古品をやり取りする事業(フリマなど)、③スキルや時間をやり取りする事業(クラウドソーシングなど)、④お金をやり取りする事業(クラウドファンディング)の4パターンに分類し、それぞれ市場規模の推定を行いましたが、各分野を総合すると約4700億円から5200億円の市場規模となっています。
現在、日本のGDPは530兆円もありますから、数字の絶対値としてはまだ小さな額ですが、政府では、これらをGDPにどのように取り込んでいくのか検討を進めていく方針です。
日本でシェアリング・エコノミーは伸びない?
シェアリング・エコノミーを経済指標に反映しようという試みは評価できますが、日本の場合、むしろ問題は別のところにあります。
日本では、タクシー業界による猛烈なロビー活動の結果、ウーバーは事実上、日本市場に本格進出できない状態が続いています。ウーバーやグラブ、オラ、滴滴など、世界の主要配車アプリをすべて傘下に収め、全世界におけるシェアリング・エコノミーの中心的な存在となっているソフトバンクの孫正義社長は日本の閉鎖的な規制について強く批判していますが、今のところ状況が変わる兆しはありません。
民泊についても、2018年6月に民泊新法が施行され、一定の条件下で民泊が認められましたが、設定された宿泊日数制限を考えると、事実上の禁止に近い措置といってよいでしょう。
つまり、日本ではシェアリング・エコノミーの中核をなすライドシェアと民泊という巨大産業が制限されており、シェアリング・エコノミーの発展が阻害された状況にあるわけです。
ライドシェアや民泊の実施に様々な問題が付随することは多くの人が認識していますが、各国はその中でどうすれば現実的な解決策を見いだせるのか試行錯誤しています。その理由はシェアリング・エコノミーがもたらすインパクトの大きさを理解しているからです。
日本がこうした努力を放棄し、原則禁止という方向で処理してしまっているのは非常に残念なことです。これが日本経済の成長をさらに鈍化させないか非常に心配です。