加谷珪一の情報リテラシー基礎講座 第31回
前回は人から直接情報を得る方法について説明しましたが、人からの情報を活用する場合には、この方法は極めて効率が悪いという現実について強く認識する必要があります。それでもその情報が欲しいという場合にのみ限定した方がよいでしょう。
人から情報を得る行為は生産性が低い
人から直接情報を得るというやり方は、情報の入手そのものにかなりの手間がかかります。ようやく情報を得たとしても、今度はそれがどの程度、信頼性のあるものなのか、別な角度から検証しなければなりません。
相手が、正確な情報を持っていることについてあらかじめ知っており、かつ相手が情報を出すメリットや、それに伴うバイアスについてもよく理解しているという場合には、こうした検証作業を省くこともできるでしょう。
しかし、相手のことをよく知らない状態ではそれも不可能となります。つまり人から話を聞いて、それを活用するという行為は、手間がかかる分、非常に生産性が低くなるのです。
合理的に考えれば、生産性が低い行為を続けていくメリットはありません。
以前、このコラムで言及しましたが、米国中央情報局(CIA)のような諜報機関においても、情報分析の基本は公開情報の収集や整理です。
人から直接、情報を収集するというのは、その方法以外に情報収集する手段がない、あるいは、相手が極めて重要な情報を持っている場合などに限定した方がよいでしょう。
どうしてもその情報が必要なのか?
筆者は10年以上前、国内で不動産投資がブームになり始めた頃、国内でアパートやマンションの一棟買いを行う個人投資家が実際どのような物件を取得しているのか、あるいはどの程度の利回りを確保できているのかについて知る必要があり、複数の個人投資家にお金を払って話を聞いたことがあります。
食事代と謝礼を合わせて十数万円の出費でしたが、非常に密度の濃い、現場ならではの話を聞くことができ、非常に有意義な出費でした。
現場のナマの話はネットや書籍などではなかなか出てこないものです。このような情報を収集するためでしたら、それなりの出費や手間も十分にペイすることになります。しかし、不動産投資に関する一般的な情報や物件の情報であれば、ネットで多くの部分をカバーすることができます。
最初から人に頼ってしまうと、情報収集や分析の生産性が大きく低下し、結果として、迅速な対応ができなくなります。人から情報を得るという行為については、その効率について、しっかり吟味してください。
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