経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 投資

今の100万円と1年後の100万円は価値が違う

加谷珪一の金利教室 第6回

 金利が持つ時間的な価値が分かってくると、お金の価値が時間で変化することも直感的に理解できるようになってきます。

時間が絡むとお金の価値が変わってくる

 このコラムでは何度か言及しますが、お金というのは持っているだけで運用益を稼ぐことができる便利な存在です。逆にいうと、手元にお金がないと運用することができないので、大きな機会損失となります。

 今、手元に100万円があり、来年、もう100万円受け取る予定があると仮定しましょう。手元の100万円は自由に使えますが、来年、受け取る100万円は、当然のことながら、来年にならないと使えません。この2種類のお金は同じ価値でしょうか。

 時間に値段がついているのであれば、当然のことながら両者の価値は異なります。

 今、手元にある100万円の価値は100万円ですが、1年後に受け取る100万円の価値は100万円にはなりません。具体的にはもう少し小さな金額になってしまうのです。

 どういうことかというと、来年受け取る100万円を今、受け取ることができれば、そのお金を運用して増やすことが可能となります。金利が5%だった場合、来年にはそのお金は105万円になっているはずです。しかし、来年、受け取るということになると、その間の投資収益は機会損失となりますから、この分だけ、100万円から差し引かなければなりません。

 来年、受け取る100万円は、言い換えれば、現時点で持つお金を5%で運用すると来年に100万円になるとも考えることができますから、計算すると95.2万円というのが、来年受け取る100万円の現時点での価値になります。

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金利のテクニックを駆使した儲けの仕掛けはあちこちに

 この考え方は金融工学の世界ではごく常識的なものです。

 将来受け取るお金について金利分を割り引き、今の価値に換算したものを「現在価値」と呼んでいます。つまり将来受け取るお金は、時間の経過分、割り引いて考える必要があるという意味です。

 実はこうした時間を活用したテクニックはビジネスの世界ではあちこちに見られるものです。身近な例では電子マネーのサービスがあります。

 電子マネーの中には、最初に利用する際、デポジットを要求されるものがあります。カード1枚を発行する際に500円のデポジットが発生した場合、それを受け取った企業はタダで500円を手に入れたことになります。広く普及している電子マネーになると普及枚数が数千万枚という数字になるでしょう。
 
 仮に500円のデポジットのカードを5000万枚発行すると、発行した企業には250億円のお金が入ってくる計算になりますが、このカードが機能している間、この企業は250億円を自由に運用することができます。

 金利が3%と仮定すると、年間7億5000万円の収入になりますが、本来、この利益はデポジットを提供していた利用者が受け取るべきものといえます。3%という数字は小さいように見えますが、元本の絶対値が大きくなってくると、巨大な収益につながってくるのです。

加谷珪一の金利教室 もくじ

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