経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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消費低迷が顕著となり都市銀行の貸し出しも減少へ。アベノミクスは逆回転を開始?

 2016年4~6月期のGDPは事前の予想を下回り、事実上のゼロ成長となりました。また、都市銀行の貸し出しがアベノミクスのスタート以降、初めてマイナスに転じています。消費の低迷が設備投資を抑制し、それがさらに消費を抑制するという負のスパイラルについて、強く警戒する必要が出てきたかもしれません。

消費が減り設備投資が抑制されるという負のスパイラル
 内閣府は2016年8月15日、2016年4~6月期のGDP(国内総生産)速報値を発表しました。物価の影響を除いた実質でプラス0.048%、年率換算ではプラス0.2%と、事実上のゼロ成長になりました。

 ゼロ成長になった主な原因は個人消費の停滞です。個人消費はGDPの6割を占めるもっとも大きな項目ですが、今期はプラス0.2%にとどまっています。前期はプラス0.7%だったのですが、さらにその前の期はマイナス0.8%でしから、前期はその反動に過ぎません。ここ1年近く消費は横ばいに近い状況とみてよいでしょう。

 さらに気になるのは設備投資です。今期はマイナス0.4%と2期連続で減少となりました。消費低迷を受け、企業が設備投資を絞っている可能性があります。
 設備投資が減ると労働者の所得も減少するので、消費がさらに減るという悪循環に陥る可能性があります。両者が総崩れになることが確実になったわけではありませんが、警戒が必要な段階に来ていることは間違いありません。

 実はこれまでも消費はあまり活発ではなく、GDPの数字も公共事業が補ってきたという面が多分にありました。今期についてもプラス2.3%となっており、これによって何とかマイナス成長を回避しています。
 しかし、今期については2016年度予算の前倒し執行など、ゲタが履かせられてた状態です。景気対策から消費増税も延期されており、今後は十分な財源が確保できない可能性も考えておくべきでしょう。

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銀行貸し出しの減少という気になるデータ
 ここにきてさらに気になる情報が出てきています。大手銀行の貸し出しが45カ月ぶりに減少に転じたのです。全銀協によると都市銀行の貸出金は前年同月比でマイナス0.7%となりました。都市銀の貸出金がマイナスに転じるのは実に45カ月ぶりのことです。

 銀行の貸し出しについては日銀も同様の統計を取りまとめており、そちらはまだプラスを保っています。しかし、今年に入ってから貸し出しの伸び率が急低下しているというのは両統計に共通の現象であり、融資がどんどん減っているのは事実です。

 消費低迷で企業の設備投資意欲が減少し、これが融資にも影響を及ぼしている可能性があります。今のところマイナスに転じたのは都市銀だけですが、地方の企業は大手の下請けや関連会社ということも多く、時間差を経て、都市銀から地方銀行に影響が波及する可能性は高いでしょう。もし地方銀行の貸し出しも減少してくるようなら、これは経済全体の問題ということになります。

 日銀は量的緩和策によって毎年80兆円もの資金を金融機関に提供しています。これらの資金は、日銀の当座預金に積み上げられており市中には出回っていないと指摘されてきました。しかしそれでも資金供給が続く限りは、銀行の貸し出しは少しずつですが増えていくはずです。

 それにもかかわらず融資が増えていないということは、場合によってはアベノミクスが逆回転を始めた可能性も考えられます。もしそのような状況に陥っているのであれば、そろそろ日銀は、量的緩和策の継続性について何らかの方向性を示す必要に迫られるかもしれません。

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