知っているようで知らない外貨投資の話 第2回
前回は「東京外国為替市場」という取引所は存在していないことについて解説しました。今回のテーマは世界の為替市場の中でどこが活発なのかという話です。前回と同様、Q&Aをご覧ください。
[box class=”blue_box” title=”問1″]世界の外国為替市場の中でもっとも取引量が多いのはニューヨーク市場である。
(答え ×)[/box]
為替取引は、シンガポール、香港、フランクフルト、シドニー、チューリッヒなど世界で行われていますが、東京、ニューヨーク、ロンドンが世界三大市場と呼ばれています。
ニューヨークは世界中のお金が集まっている場所ですから、為替取引も断トツのトップなのではないかとイメージされますが、実はそうではありません。為替取引の世界では、圧倒的にロンドン市場の規模が大きくなっています。したがって問1の答えは×ということになります。
ではなぜロンドン市場の規模が大きいのでしょうか。
ひとつは英国という国の成り立ちです。かつての英国は今の米国を超える覇権国家であり、英ポンドはまさに世界通貨でした。当然、ロンドン市場には、ポンドと各国の通貨を交換する取引が集中しており、巨大な為替市場が形成されていました。
こうした歴史的経緯があるため、ロンドン市場は今でも大きな市場となっているわけですが、理由はそれだけではありません。
取引が活発かどうかは「時間帯」がポイント
どんなに技術が発達しても、人が生活するリズムは変わりません。昼に起きて、夜に寝るというのは万国共通の生活習慣です。昼夜の動きは地球の自転でもたらされるものですが、そうなってくると、市場が地理的にどの場所に位置しているのかというのが非常に重要なポイントとなります。
現在、地球上において大きな経済圏を形成しているのは、米国、欧州、そして東アジア(日本と中国)の3つです。
ロンドンと東京の時差(夏)は8時間ですから、ロンドン市場がスタートする時、日本は夕方でありギリギリ業務時間内です。一方、ロンドンとニューヨークの時差は5時間ですから、ロンドン市場が閉じる前に、ニューヨーク市場がスタートします。
つまりロンドンは、ロンドン固有の取引に加え、東京とニューヨークの投資家も参加しやすい時間帯に位置しているのです。
今後、投資の世界はAI化が進む可能性が高く、これまで以上に、昼夜の区別はなくなってきます。しかし、人間の生活時間帯はどんなにAI化が進んでも変わりませんから、「場所」の重要性も低下することはないでしょう。
為替市場は突出して規模が大きく、世界の金融取引の中心といってよい存在です。その中において、通貨はドル、場所はロンドンというのが、現時点での世界標準となっています。没落した国とイメージされている英国ですが、いまだに国際社会で強い影響力を持っていることには、こうした背景があるのです。
ちなみに、ユーロ/円のような「ドル」を介さない為替レートをクロスレートと呼びますが、ドルを介在しない取引は、対ドルの取引と比べると規模が圧倒的に小さく、事実上の手数料であるスプレッドも高くなりがちです。このあたりについてはいずれ解説していきたいと思います。