経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. テクノロジー

本人の代わりにAIが電話してくれるグーグルの新サービス

 このところ社会のAI化が急ピッチで進んでいますが、グーグルがさらに驚くべき発表を行いました。本人に代わってAIが電話をかけて、お店などを予約してくれるという機能です。

AIとは思えない自然な会話で電話予約が実現

 グーグルには、会話形式で利用者の要望に応えるグーグルアシスタントというサービスがありますが、AI予約はこれを拡張したものです。

 同社は毎年、開発者向けにイベントを行っていますが、5月に実施された今年のイベントの目玉となったのが、この予約サービスです。会場では同社のピチャイCEO(最高経営責任者)がプレゼンテーションを行い、美容院とレストランに予約を入れるデモが披露されました。

 美容院のケースでは、非常にスムーズに会話が進み、予約を確定することができました。「少々お待ちください」という店員さんの言葉に対して、AIは「Mm-hmm」(相づちを示すくだけた表現)と流暢に返し、会場の笑いを誘っていました。
 一方、レストランの方は、日時と人数が一時混同するなど、少々会話がかみ合っていませんでした。最終的に5人以下の予約はできず、直接、来店となって電話が終了しています。

 グーグルが、わざわざ完璧ではなかった例もデモで披露したのは、少々イレギュラーな形でもやり取りが成立するという柔軟性をアピールしたかったものと思われます。

 このAI技術の詳細は不明ですが、おそらく、お店の予約に特化したものでしょう。したがってまったく別の会話が入ってきた場合には対応できなくなる可能性が高いと考えられますが、通常の予約の範囲内であれば、十分に実用に耐えられそうです。

 グーグルは夏にも試験運用を始めたい意向ですが、日本語環境と英語環境ではAIによる会話にはかなりの差があります。日本語で同じサービスが実現するのはもう少し先のことかもしれません。

コミュニケーション・ギャップの解消が期待できる

 グーグルの今回の取り組みは、ITインフラを持っていない人でも、その恩恵が受けられるという点で、従来とは逆のアプローチといってよいものです。

 IT化が進む米国でも、零細店舗を中心にネット予約システムが完備されていないところはたくさんあります。AIが音声でこうしたやり取りを代行してくれるのであれば、全社会にITインフラが整備されなくても、近い効果を得ることが可能となります。

 もう少し技術が発達すれば、お店の予約はもちろん、ビジネス上のアポイントも自動化されそうです。日本国内でもチャットボット(自動対話システム)を使った、アポイントの自動調整サービスが登場していますから、普及は意外と早いかもしれません。

 現在、ビジネスの現場では、電話など旧来のツールに固執する人と、電話を使いたくない人との間で、多くのコミュニケーション・ギャップが生じています。

 AI技術を活用すれば、電話が苦手だった人は電話を使う必要がなくなり、一方、電話を使い続けたい人は電話をそのまま使い続けることも可能となります。それぞれが自分に合ったツールを使えますから、多くの人にとってストレスが軽減されるはずです。

PAGE TOP