6月に上場を控えたメルカリの手厚い福利厚生がネットで話題となっています。上場前の新興企業に過ぎないメルカリがなぜ大手企業をしのぐ職場環境を構築できるのでしょうか。
2台のディスプレイもOK
メルカリはコアタイム方式のフレックスタイム制を導入しています。フレックスタイム制を導入している大企業はそれなりに多いので、制度そのものは特に珍しいものではありません。しかしながら、メルカリのコアタイムは12時から16時までとなっており、一斉に拘束される時間が短いのが特徴です。
業務インフラも良好です。社員は自分が希望するスペックのパソコンを自由に使うことができ、最新のパソコンが発売されれば、すぐに交換することができます。ディスプレイを2台並べて使いたいという希望があれば、それもOKとのことです。
社員のスキル向上も支援しており、レポートを社内で共有すれば、有料セミナーも会社負担で参加できるほか、オンライン英会話など複数の学習環境が提供されています。当然、副業は自由で、会社はプライベートには干渉しません。
子供を持つ社員に対する支援も豊富です。産休・育休期間中の給与については、女性の場合には約8カ月間、男性の場合には約1.5カ月間、全額が保証されるほか、不妊治療の支援もあり、年齢に関係なく費用の全額もしくは一部を会社が負担してくれるそうです(治療開始から10年間)。
多くの人は、この話を聞いて条件の良さに驚くと思いますが、重要なのはそこではありません。
働き方改革の本質はマネジメントにある
経営側から見ると、福利厚生というのはそれほどコストのかかる施策ではなく、社員の年収を上げることに比べれば企業側の負担は軽いものです。
一定以上の収益があれば、実現はそれほど難しいことではないでしょう。では、なぜメルカリなど一部の企業だけが、こうした制度を導入できて、多くの日本企業は実現できないのでしょうか。
問題の本質はマネジメントにあります。例えば、フレックスタイム制であれば、すでに20年以上も前から、大企業を中心に導入が進められてきましたが、うまくいかず、最近ではフレックスタイム制を撤廃するところも出てきています。
フレックスタイム制では、各社員は始業時間と終業時間を自分で調整できますが、コアタイムの時間帯は必ず会社にいなければなりません。
例えばメルカリのように、午前の出社が自由ということになると、午前中に何かトラブルが発生した場合、偶然、その時間帯に出社していた社員に大きな負荷がかかることになります。フレックスタイム制度を取りやめた企業の多くは、こうした社員の不公平感を理由にしています。
制度をうまく運用するためには、誰がどの業務に対して責任を持つのか事前にはっきりさせておくか、仕事の偏りも含めて、各人の成果を正しく評価できるマネージャーを配置する必要があります。つまり、制度をうまく運用できるのかは、すべてマネジメントの質にかかっているわけです。
多くの日本企業はこの部分がハードルとなり、良好な職場環境を構築できません。最終的にはすべて経営の問題なのです。ここを改革できない限り、日本企業の生産性向上を実現するのは難しいでしょう。