中国人旅行客のマナーの悪さが、中国のメディアで話題になっています。マレーシアの航空機内で客室乗務員と口論になり、麺と熱湯を投げつけた旅行者に対して、中国のメディアが旅行者の言動を批判する記事を掲載しました。
最初に報道したメディアは政府系ですので、これは話題というよりも、大国としてのイメージを作り上げたい中国政府が、国民に対して指導したものと考えてよさそうです。
基本的には経済水準の問題
人によって振る舞いはそれぞれですから、安易に「○○人は○○である」という断定をしてしまうのは良くないのですが、中国人旅行者のマナーが総じて良くないことは、世界的によく知られています。ある中国人は、「中国人のいないところに旅行に行きたい」とボヤいていました。
どの国の人のマナーが良くないのかについては、国民性にもよりますが、多くは、その国の経済水準で決まると考えてよいでしょう。一般的に豊かになればなるほど、国民のマナーは向上していきます。
中国のGDPが日本を追い抜いたのは2009年ですが、1人あたりのGDPでは日本の5分の1にとどまったままです。
日本で、1人あたりのGDPが現在の5分の1だったのは40年以上も前のことです。当時は舗装されていない道路もあくさんありましたし、路肩の側溝にはドブが流れ、タバコの吸い殻やゴミが当たり前のように落ちていました。今の中国人はこうした時代の日本人と同じ状態なわけですから、マナーが悪くなるのも当然でしょう。
昭和の時代までは、ツアーで海外旅行する日本人観光客のマナーはひどいものでした。当時の新聞などを見ると、日本人による目を覆いたくないような野蛮な振る舞いのオンパレードです。筆者がサラリーマンだった頃は、飛行機に乗ると突然横柄になり、人が変わったようになる上司がたくさんいたものです。
これらは、基本的には同じメカニズム(豊かさ、貧しさ)によるものであり、解決するためには、経済的に豊かになるしかないのです。
現在、中国社会は急速に豊かになっています。平成に入って、日本人がスマートに振る舞えるようになったのと同じように、やがて中国人の振るまいも、今よりも洗練されたものになる可能性が高いでしょう。
数字で見ると簡単に理解できることも多い
こうした問題について、国民性など、定性的な観点でだけ議論していると、なかなか結論が出てきません。国民性の解釈は人それぞれだからです。
しかし、1人あたりのGDPに代表されるような、数字で表されるものについては、余分な解釈が入る余地が少なくなります。数字を過信するのはよくないですが、全体の状況を客観的に比較するには、非常に有益なツールなのです。
今の日本は、財政再建や年金の維持可能性など、様々な問題を抱えています。しかし、基本的に日本人は現状維持を望み、変化を嫌っているように見えます。なぜそうなっているのかについては、多くの人が、それぞれの意見を持っていることでしょう。
しかしながら、この現象も、日本人の平均年齢を考えればある程度納得がいきます。現在の日本人の平均年齢は45歳なのですが、45歳ともなると、たいていの人は、保守的で頑固になり、変化を嫌うようになります。
日本全体がそうなわけですから、それがいいことか悪いことは別にして、多くの人が現状維持を望むのは、ある意味で当然の結果なのです。
物事について考える時、定性的な分析も大事ですが、こうしたマクロ的、定量的な分析を行うと、スッキリ理解できるというケースは案外多いのです。