経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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都市型イオンモールが地方創生のカギになる?

 安倍政権における重要課題のひとつである、地方創生が徐々に動き始めています。先の臨時国会で地方創生法案が可決成立していますから、来年からはより具体的な動きが出てくるでしょう。

 しかし、政府による地方創生は従来の政策と大差なく、単なるハコモノやバラマキに終わるとの声も出ています。国や自治体にできることは限られていますから、地方創生がうまくいくのかどうかは、やはり民間の力にかかっているといってよいでしょう。その意味で、小売大手イオンの動きは注目に値します。

イオンモールは郊外から都市部へ
 イオンはこれまで郊外を中心にショッピング・モールを大展開してきました。しかし、2014年12月5日に岡山にオープンしたイオンモールは従来と全く異なるコンセプトで作られています。何と岡山市の中心部に進出したのです。

 イオンモール岡山は岡山駅東口から徒歩5分という好立地です。しかも、1階には300メールしか離れていないところに位置する岡山高島屋の食品売り場がそのまま出店しています。イオンが大都市の駅前に出店するのも驚きですし、本来なら競合になるはずの近隣の百貨店が、イオンモール内に出店したというのもまた驚きです。

 こうした動きの背景には、急速に進む人口減少の動きがあります。

 日本では高齢化と人口減少が急速に進んでいるのですが、人口が減ってくると、コミュニティを維持できない地域が急速に増えてきます。その結果、地域の拠点となる都市部への人口集中が進む可能性が高くなってきているのです。

 イオンや高島屋の動きはこれを先取りしたものと考えてよいでしょう。つまり、競合として顧客を奪い合うよりも、人口移動という大きな流れを受け、集約拠点としての魅力を高めた方が有利と判断したわけです。

 総務省では、近い将来、多くの自治体が消滅の危機に瀕すると予測しているのですが、地方創生関連法の最大の狙いは、人口減少に歯止めをかけ、東京など大都市への急激な人口流出を抑制することにあります。

 しかし現実問題として、地方ではある程度、拠点都市への集約を行わないと、医療や福祉といった行政サービスを均一に提供することが難しくなっています。
 地方創生と中核都市への機能集約はセットで考えるべきであり、多くの顧客を惹きつける商業施設が中心部に建設されることは、非常に意味のあることなのです。

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自然の流れに逆らわないことが重要
 地方都市の中には、中心部が寂れてしまい、郊外型の店舗ばかりになってしまったところも少なくありません。しかし、市街地にこうした生活インフラを集中させることで、郊外から人が戻り、街に活気が出てきます。

 さらに、自治体が積極的に住宅、病院、介護施設、学校などの整備を行えば、その利便性の高さから、一気に人口が中核都市に集中するようになるでしょう。一定範囲に施設が集中していますから、車を運転できなくなった高齢者や車を購入出来ない人もメリットを享受できるはずです。

 人がたくさん集まるとそれだけで様々な需要が発生しますから、何もしなくても雇用の創出につながり、最終的には人口流出に歯止めをかけることになるでしょう。地方で何かビジネスを考えている人にとっては大きなチャンスとなるはずです。

 人口集約が進むと、中には消滅してしまう集落も出てくるかもしれません。消滅する集落が出てくるのは寂しいことですが、地方全体の存続のためにも、ここは、ある程度の割り切りが必要です。

 もう少し広い視点で考えれば、人口集約を進める方が、結果的にその地域全体の特色や人のつながりを維持することが可能となるはずです。

 人口の集約が進むと、移住に伴う負担が大きい人が出てきますから、行政は企業の誘致といったフロント面ではなく、むしろ、こうした人達への支援に力を入れることが重要でしょう。

 大きなプロジェクトをうまく進めるコツは、自然の流れに逆らわないことです。優良な地方経済を存続・発展させることは、今後の日本経済にとって極めて重要な課題です。その意味で、行政がで変にでしゃばりすぎないことを切に願いたいと思います。

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