経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. トピックス

コロナウイルス対策と働き方改革の深い関係

 新型コロナウイルスの感染が広がっていることから、政府はいよいよ小中学校、高校の一斉休校に乗り出しました。状況について不安視する人も増えていますが、感染を予防する方法は一般的なインフルエンザと変わりません。日常的なインフルエンザ対策を徹底することが、そのままコロナウイルスの感染予防策となります。

日本は実は感染症大国になっている

 新型肺炎には有効な治療法がなく、強い警戒が必要なのは事実ですが、実は日本国内では毎年3000人以上が一般的なインフルエンザで亡くなっています。インフルエンザの流行がなければ死亡を回避できた人の数(超過死亡)を加えると、その数は1万人に達するともいわれていますが、これは尋常な数字ではありません。

 今回の騒動がなくても、感染症というのは日本社会における大きなリスク要因となっているのが現実なのですが、私たちの感染症に対する意識はかなり低かったと言わざるを得ないでしょう。

 では具体的にどのようにすれば感染を防げるのでしょうか。

 一般的に、インフルエンザや今回の新型コロナなどウイルスによる感染症は、飛沫感染と接触感染が主要な感染経路とされています。その他の経路もあるといわれていますが、感染というのは確率的に決まりますから、確率の低い経路を過剰に気にしてもあまり意味はありません。とにかく主要な感染ルートと思われるところから重点的に対策を施すのが鉄則ということになるでしょう。

 飛沫感染と接触感染を回避するためには、人が近距離で密集する場所に長時間滞在することを避け、他人とできるだけモノのやり取りをしないことが重要となります。

 接触感染による感染は意外と多く、不特定多数の人が触れるエレベーターやコピー機のボタンはウイルスの巣窟です。諸外国ではインフルエンザが流行した場合には、書類のやり取りを控える、可能な限り会議を控える、デスクに消毒液を置く、といった措置を実施する企業もあるくらいですから、基本的に手洗いと消毒はマメにやった方がよいでしょう。

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働き方改革ができる組織は感染リスクも低い

 すでにあちこちで指摘されていますが、満員電車による通勤が感染拡大の温床となっているのはほぼ間違いありません。テレワークや時差通勤で電車の混雑を緩和することは、自分の感染リスクを減らすだけでなく、どうしても出勤が必要な人のリスクも軽減する効果もあります。可能な限り、テレワークや時差通勤を試みた方がよいでしょう。

 しかしながら、もっとも重要なのはわたしたちの健康管理であることは言うまでもありません。過重労働を避け、万が一感染した場合には、本人が無理に出社しなくても業務が回るようあらかじめ社内体制を構築しておけば、それだけで感染拡大リスク大幅に減らすことができます。

 結局のところ感染症対策というのは、働き方改革やIT化と密接に関係しています。日常的に働き方改革に前向きな組織や個人は、インフルエンザの感染にも新型コロナウイルスの感染にも強いということになります。今からでも遅くありませんから、可能な範囲で、働き方改革を進め、感染リスクを低減していくことが重要でしょう。

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