日本がIT革命で出遅れ、国際競争力を大きく低下させているのは、多くの人にとって共通認識だと思います。いまだにITシステムをうまく使いこなせない社員も多く、ホワイトカラーの生産性向上の妨げになっているのですが、近い将来、再び同じ事態に陥る可能性を示唆する不気味なデータがあります。
日本は高齢者と若年層のITスキルが特に低い
日本では年齢が上がるにつれてITに疎くなるというのは、ごく当たり前のこととして受け止められています。しかし、諸外国では必ずしもそうとは限りません。年齢が高くなるとITスキルが下がるのは、どの国にも見られる共通の傾向ではあるのですが、日本の場合、ITスキルと年齢の相関が特に高いという特長が見られるのです。
OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本人のITを活用した問題解決能力は、25歳から44歳の間ではOECD平均を上回っています。しかしながら、この調査結果は少し疑ってかかる必要があります。ITスキル調査は当然のことながら、パソコンなどITツールを使って診断が行われるのですが、そもそもパソコンが使えない、使いたくないといった理由でテストを拒否した被験者はデータから除外されているからです。
日本人の被験者でパソコンを使った診断を拒否した人の割合は他国と比べてかなり高く、これを含めると日本人の平均点は大きく下がる可能性があります。
とりあえずテストを受けた人の中で得られた結果を前提にして話を進めますが、注目すべきなのは高齢者と若年層です。先ほど説明したように25歳から44歳までは平均値を超えていますが、50歳を超えると下がり始め、60歳以上では平均値を下回っています。つまり諸外国と比較すると日本では高齢者のITスキル低いことが分かります。
これは若年層も同じです。諸外国では16歳~34歳までのITスキルはほぼ同レベルですが、日本人では24歳以下になると急激に低下するという特長が見られます。
整理すると、日本では高齢者と若者のITスキルが低いということになるわけですが、これは何を意味しているでしょうか。
体系的な教育が行われていない
中高年のITスキルが低いのは、年功序列の人事制度が原因と考えられます。日本では一定の年齢を超えると、能力にかかわらず全員が管理職的な仕事に従事し、しかもITスキルに関する体系的な教育は行われません。その結果、ITが使えない大量の中高年社員を生み出す結果となっています。
若年層についても似たような状況です。日本の小中学校におけるIT活用度は先進国中、断トツの最下位であり、子どもがITツールに触れる機会がありません。ITに関するスキルが低くなるのも当然の結果といってよいでしょう。
こうした状況を続けていると、近い将来、再び問題が発生する可能性が高いと考えられます。
現在、働き盛りの20代から40代の社員は仕事の現場で何とかITを使いこなせていますが、10年後、20年後にはまったく新しいITツールが登場している可能性が高いでしょう。しかし、今のような人事制度や教育体系のままでは、今、ITが使えている人たちも、ITが使えない中高年になってしまう可能性が否定できないのです。
世代を問わずまんべんなくIT教育を実施する体制を構築しなければ、日本は次のIT革命でも乗り遅れてしまうかもしれません。