富裕層の定義が資産1億円以上であるという話の経済学的根拠

お金持ちを科学する 第3回

 前回は、金融資産1億円というのが富裕層の一般的な定義であると解説しました。では、なぜ1億円という金額が富裕層とそうでない人の境目となっているのでしょうか。数字のキリがよいという理由もあるのですが、実は経済学的にも意味のある数字なのです。

1億円以上が富裕層という話は日本のGDPと関係している

 まず、1億円という資産額ですが、これは負債を含めない純金融資産のことを指しています。1億円の資産を持っていても、借金も同じく1億円ある人は富裕層とは呼びません。

 例えば億単位の借金をして不動案を所有しているような場合、資産総額は数億円ということになります。しかし、資産を売っても、そのお金を借り入れの返済に充てなければいけない状態では、本当の意味で資産を持っているとは言えません。したがって総資産額から負債の額を引いた額(純資産額)の大きさで資産を評価することが重要になってくるのです。

 では純資産で1億円以上持っていると、なぜ富裕層と呼べるのでしょうか。

 一国の経済規模を示す代表的な指標はGDP(国内総生産)ですが、一般的にGDPについて議論する際には、GDPが持つ3つの側面(支出面、生産面、分配面)のうち支出面が使われることがほとんです(個人消費や設備投資というのは支出面の項目です)。しかし、GDPには3面等価という原則があり、お金を支出した人がいるなら、該当する製品を作った人や、お金をもらった人がいます。

 お金の受け取りに関する側面(つまり分配面)に着目した場合、税金と減価償却を除けば、雇用者報酬と営業剰余(最終的には利子や配当になる)に大別できます。雇用者報酬は要するにサラリーマンの給料、利子・配当はお金持ちの不労所得(つまりお金が生み出したお金)です。

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働かなくてもよいのは1億円から

 現在、日本のGDPは約500兆円ほどあります。このうち、サラリーマンへの給料として支払われているのは約250兆円で、全体の約半分を占めています。一方、資本に対する対価として支払われたのは約100兆円です(不労所得)。

 日本の労働人口は約6600万人ですから、雇用者報酬250兆円を労働人口で割ると、労働者1人あたりの報酬が計算でき、ここでは約380万円となります。大雑把にいうと労働者として働いた場合、平均年収は300万円台となるわけです。

 一方、日本において、資本として提供されているお金の総額(国富)は約3000兆円なので、100兆円の不労所得の利回りは約3.3%になります。つまり、あらゆる投資を総合すると日本では平均して3.3%でお金が回っているのです(これはあらゆる投資を総合したマクロ的な数字ですから、個別の投資案件と直接比較することはできません)。

 日本の平均年収は300万円台ですが、利回りが3.3%の場合、いくらの資産があれば300万円台の収入を得ることができるでしょうか。この金額がざっと1億円ということになるわけですが、これは、1億円あれば、日本人の平均的な所得を働かずして得られるということを意味しています。

 300万円では贅沢はできませんが、1億円の純金融資産を持っている人は、やろうと思えば、今すぐにでも、働かずに寝て暮すことができます。働かなくてもよいという立場でなければ本当の富裕層とはいえませんから、これを実現できる最低金額が1億なのです。数字のキリがよいということ以外に、1億円には経済学的な意味があったのです。

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