お金持ちを科学する 第2回
誰がどのくらいお金を稼いでいるのかが分かれば、どのビジネスが稼ぎやすいのか、ある程度までなら推測できます。国税庁が2004年まで毎年発表していた高額納税者ランキング(いわゆる長者番付)は、誰がどのくらいの金額を稼いでいるのかを知る有力な手段でした。
長者番付は税金の面しか見ていない
この制度が出来上がった経緯はあまりスジのよいものではなく、お金をたくさん稼いだ人の実名を公表することで、脱税の疑いがある人を通報させるという目的がありました。乱暴に言ってしまえば、密告を推奨するためのものであり、ある意味では日本社会の息苦しさを象徴する制度だったわけです。
しかしながら、この長者番付を見ても、富裕層のごく一部の面しか分からないというのが現実でした。その理由は、長者番付の基準があくまでも納めた所得税の額だからです。
所得税は毎年の年収に対してかかる税金ですから、資産額とは直接関係しません。このため、毎年の報酬が多い人や、資産を売却して一時的に高額の所得を得た人の順位が高くなるという特徴がありました。
土地を持つ人が死亡し、相続した家族が相続税を払うために資産を売却するケースでは、それほどの富裕層でなくても一時的に長者番付に顔を出すことがある一方、意図的に年収を低く抑えている超富裕層は、長者番付には記載されません。
多額の資産を保有しているものの、目立った事業などをしておらず、かつ相続対策を講じているような人は、ランキングにはなかなか出てこないのです。
もっとも目立ってしまうのは芸能人でしょう。彼等の富の源泉は、基本的に高額のギャラしかありませんから、こうしたランキングに掲載されやすくなります。結局、長者番付は廃止されましたが、仮に継続していたとしても、本当の意味で富裕層を100%把握できるツールとはいえなかったわけです。
資産1億円以上が一般的な富裕層の定義
最近では株式の上場など、ストックをベースに資産を築く人も増えてきており、それに伴って富裕層を把握する手段も変化しています。
現代では、富裕層かどうかを判断する材料として資産額を用いるというのが、おおよそのコンセンサスとなっています。世界的な富裕層調査や、いわゆる富裕層マーケティングの世界でも、資産額をベースに考えるのが一般的です。
富裕層について継続的に調査を行っている野村総合研究所でも基本的にそのような考え方に沿って富裕層を分類しているようです。
同社によると、1億円以上の金融資産を持つ層は日本に100万人ほど存在しています。政令都市1つ分ですから、かなり多いという印象を持つかもしれませんが、日本には6000万の世帯数があります。1人1世帯とすると全体の1.7%に過ぎません。一般的にはこのラインから上を富裕層と呼んでいます。
同社では、5億円以上の資産を持つ人を超富裕層と定義していますが、このクラスになると数はさらに少なくなり、わずかに5万世帯となります。
資産額と所得は直接関係しませんが、資産額が大きい人は、部分的な資産売却だけでも結構な所得になりますし、配当などの所得も大きくなります。したがって、資産額と所得の大きさは、ある程度までは、比例すると考えて差し支えありません。
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