加谷珪一の超カンタン経済学 第1回
【経済学における消費と投資の違い】
経済を理解するためには、GDP(国内総生産)について知る必要があります。GDPはマクロ経済の土台となる概念であり、とても重要なのですが、いきなりGDPと言われても、あまりにも無味乾燥で、現実の経済とうまく結び付けて考えられないという人がほとんどだと思います。
GDPについて理解するためには、GDPそのものについて知る前に、経済学では人や企業がどのようにお金を使うと考えているのか認識しておいた方がよいでしょう。
消費は何かのメリットを追求して行われる
経済学の世界では、人や企業によるお金の使い方には2種類あると考えます。ひとつは「消費」、もうひとつは「投資」です。
「消費」と「投資」という言葉は皆さんもよく知っていると思いますし、何となく両者は違うものだという認識も持っていると思います。しかし、2つの意味をしっかりと区別して使っているという人は少ないでしょう。
消費は多くの人がイメージしている通り、食品や衣類、交通機関など、各種製品やサービスに対して支出することです。ご飯を食べると食欲が満たされますし、地下鉄に乗れば行きたい場所に移動できます。つまり、消費は何らかの満足を求めて行うわけです(お金を使って得られる満足のことを経済学の用語では効用と言います)。
食べ物は食べておしまいですが、クーラーや冷蔵庫、自動車などは、購入したことによる満足が長期間にわたって継続します。こうした製品は効用が長期間継続することから耐久消費財と呼ばれますが、これも消費のひとつです。
投資は将来、お金を生み出すための支出
一方、投資というのは、同じお金を使うという行為でも、その意味がまったく異なります。
世間一般では投資というと株式投資やFXなどを思い浮かべるかと思いますが、経済学でいうところの投資は少し意味が違ってきます。経済学での投資は、お金を支出することで何かの満足を得るためのものではなく、製品やサービスを生産するためにお金を投じる行為を指しています。具体的に言えば、工場や店舗に対して資金を投じることです。
例えば、わたしたちがお店をオープンすることを考えてみましょう。
お店を開くには、店舗となる不動産を借りて、厨房機器や椅子、テーブルなどを購入して準備を整えなければなりません。厨房機器を購入したり、椅子やテーブルを揃えることは、何らかの楽しみや満足を得るためのものではありません。
これらへの支出は、今後、その設備を使って製品やサービスを生み出し、最終的にはお金を稼ぐためのものです。つまり、将来の生産活動のためにお金を使うことを、ここでは投資と呼んでいるのです。
話を単純化すると、世の中の経済活動(支出面)には、消費と投資の2種類しかありません。経済が拡大することは、消費や投資が増えることなのです。
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