2020年1~3月期のGDP(国内総生産)の数字が発表されました。コロナ危機で経済が本格的に停滞するのは4月からですが、3月の時点でかなり影響が出ていましたから、今回の発表には多くの関係者が注目していました。結果は年率換算で3.4%のマイナスでしたが、これについてはどう考えればよいのでしょうか。
すべての項目が一斉に下落
内閣府は2020年5月18日、2020年1~3月期のGDPを発表しました。物価の影響を考慮した実質成長率(季節調整済み)は前期比マイナス0.9%でした。これは年率換算するとマイナス3.4%になります。前期は年率換算で6.3%のマイナスでしたから、2期連続で大幅なマイナス成長ということになります。当然のことながら4~6月期の数字はさらに悪くなりますから、3期連続でのマイナス成長はほぼ確実でしょう。
項目別に見ると、すべての項目がまんべんなく落ち込んでいることが分かります。
個人消費は経済の屋台骨であり、GDP全体の6割を占めていますがマイナス0.7%の落ち込みとなりました。マンションの購入など住宅投資もマイナス4.5%です。コロナ危機は全世界的なものですから当然、輸出も落ち込みマイナス6%となっています。すべての経済活動が停滞しているわけですから、企業は設備投資を行うはずもなく、企業の設備投資も0.5%減となりました。
通常、景気が悪くなる時は、何かの動きをきっかけに連鎖的に支出が落ち込むパターンが多いのですが、今回はそうではありません。すべての項目が同時に落ち込んでおり、おそらく4~6月期はさらにこれが激しい状況となるでしょう。では次の期はどのくらい経済が落ち込むのでしょうか。
今後の景気は外出制限解除後の活動にかかっている
4月からは緊急事態宣言による外出自粛が行われたことから、消費の落ち込みが相当大きくなると予想されます。消費というのは、生活にどうしても必要な基礎的な消費と、嗜好品など必須とは限らない消費に大別することができます。
必要不可欠かどうかは人によって異なりますが、大まかに分類すると消費の半分は必要不可欠なものであり、残りの半分はそうではないものと判断することができます。必要不可欠な支出が減ると、企業の売り上げが減少しますから、当然、向上や店舗への投資も一時的に中断されます。
こうした状況を総合的に考えると、4~6月期については年率換算で20%以上の下落となる可能性が高いと筆者は試算しています。多くの経済専門家も20%から30%の下落を想定しているようですから、このくらいの下落は覚悟した方がよさそうです。通年ではおそらく数%の下落は避けられないでしょう。
日本のGDPは550兆円ほどありますから、5%下落すると損失額は27.5兆円です。政府が取りまとめた経済対策は総額では117兆円ですが、直接的に景気に寄与するの真水(まみず)部分は20兆円弱しかありませんから、損失分を穴埋めすることはできません。
通期のGDP、あるいは来年のGDPをよい数字にするためには、緊急事態宣言解除後に、どのように経済活動を再開するのがカギを握っています。いくら経済重視といっても感染が再発し、外出制限となれば、さらに景気が落ち込んでいしまいます。
どうしても人の接触が必要な業界は感染対策に万全を期し、人と接触しない方法で代替が可能な分野については、遠隔化やIT化を進めていく努力が必要でしょう。