首都圏の新築マンション販売が失速しています。在庫を抱えるデベロッパーも増えているので、マンション業界は厳しい局面を迎えると考えられます。一部からはマンション価格の大暴落を指摘する声も出ていますが、ここは落ち着いた考えた方がよいでしょう。販売不振でデベロッパーの経営が苦しくなることと、マンション価格が暴落することは別の話だからです。
一部デベロッパーは在庫を抱えて困っている
不動産経済研究所が行った調査によると、2019年4月時点の首都圏新築マンションの発売戸数は、前年同期比39.3%減の1421戸にとどまりました。月間の契約率も大きく下がっており、マンション市場はかなり悪化しているとみてよいでしょう。
今年に入って、デベロッパーが販売に苦慮し、在庫を抱えているという話をよく耳にするようになりました。しかしながら、これでマンション価格そのものが暴落するのかというと、そうとも言い切れません。いわゆるマンションバブルが崩壊しても、価格は思いのほか下がらない可能性についても考慮しておいた方がよいと思います。
価格が下がらないと考える最大の理由は実需です。
首都圏における不動産価格の高騰は、投機的な側面と実需的な側面の2つが組み合わされたものです。ここ数年、外国人投資家が首都圏の高級物件を買い漁る動きが顕著となっており、これが不動産価格の上昇に弾みを付けたのは事実です。
しかしながら、首都圏のマンションはこうした投資家だけが購入しているわけではありません。実際に住むために買っている人も多く、今後もその動きが継続する可能性は高いと考えられます。
人口減少がマンションの実需買いの原動力
首都圏マンションの平均販売価格は、過去8年間で1.3倍近くに高騰しており、2018年は5871万円でした。この金額になると35年ローンを組んだ場合の利子を含む総支払い額(固定金利約1.7%を想定)は7700万円を突破しますから、一般的なサラリーマン層ではとても手が出ません。
では、ここまで高くなっているにもかかわらず、自己居住用にマンションを買う人がいるのはどうしてなのでしょうか。それは都市部に人が集約化しているからです。
日本は今後、総人口の減少フェーズに入ります。総人口が減ると、商圏の維持が難しくなる地域が出てきますから、都市部への人口集約が同時に進むことになります。都市部では逆に人口が増える地域も出てくるでしょう。
日本の場合、賃金の低下や年金の減額も予想されますから、夫婦共働きで一生涯労働しないと生活できない社会となりつつあります。一生涯働くということになると、都市部から距離が離れた地域では職場の選択に支障が出てくるので、より利便性の高い場所に人が集まることになります。
これに加えてシェアリング・エコノミーによってマイカーを放棄する人が増えてきますから、ますます利便性の高いエリアに住む人が増えるでしょう。人によっては、相当な無理を重ねてでも、都市部の物件を手に入れようとします。
実需による買いが継続する場合、体力のあるデベロッパーは、在庫を放出せず、時間をかけて販売する戦略に転換するでしょう。体力のない一部のデベロッパーは経営に行き詰まるかもしれませんが、全体からすればごく一部です。在庫をゆっくり処分するフェーズでは、一般的に価格は暴落とまではいかないことがほとんどです。
一連の実需買いが続く限り、一部の投資用物件や利便性の悪い物件を除いて、都市部のマンション価格が暴落する可能性は低いと筆者は考えます。