自民党の総裁選において安倍首相が3選を果たしたことから、社会保障制度改革が本格的に動き出すことになりました。先日、安倍氏は消費税10%への増税を正式に表明しましたが、消費増税と社会保障改革はセットと考えてよいでしょう。
定年を大幅に延長し、生涯労働社会に
10月5日に開催された未来投資会議において、安倍氏は定年を65歳以上に引き上げ、生涯労働できる仕組み作りを行うよう指示しました。同時に、社会保障制度の改革についても言及し、高齢者に偏っている制度を「全世代型」に改める方針も明らかにしました。
現在、日本の公的年金は、現役世代から徴収する保険料よりも、高齢者に支払う年金額が多いという「赤字」運営となっており、この状況を続けることが困難になっています。一方、日本人の寿命が大幅に伸びていることから、高齢者になっても働くことが十分に可能となっています。
現在の法律では、企業に対して「定年の延長」「定年の廃止」もしくは「再雇用」という形で、労働者が希望した場合には65歳まで雇用することを義務付けています。今後はこれを大幅に引き上げ、最終的には70歳になっても働けるようにするというのが一連の制度改正の狙いです。これは事実上、生涯労働を前提にした制度の導入と考えてよいでしょう。
希望する人がずっと働けるのはよいことですが、当然、この施策と年金の減額(支給開始年齢の引き上げ)がセットになる可能性は高いでしょう。
仕事選びの基準も変わる
現在、公的年金の支給開始年齢は65歳までの引き上げが完了しつつある状況ですが、これが68歳まで引き上げられるのはほぼ間違いないでしょう。政府内部の議論では70歳までの引き上げという話も出ています。先ほどの定年延長の議論が70歳までを前提にしていますから、年金もこれに合わせて70歳支給になると考えるのが自然です。
先ほど年金財政が赤字と説明しましたが、すで現時点でも税金からかなりの補填が行われています。年金財政を均衡化させるためには、仮に70歳まで支給開始を引き上げたとしても、現状の国庫負担は維持しなければなりません。そのためには消費税の増税が必須というのが政府の主張です。
今回、安倍氏が10%への消費増税と社会保障改革をほぼ同時に打ち出したのは、両者がセットになっているからです。
一連の動きを見ると、今後は一生涯働くことが大前提となり、年金はどうしても働けなくなった時に利用するものという位置付けに変化していく可能性が高いと考えられます。よほど資金的に余裕のある人以外は、リタイヤしてのんびりというわけにはいかなさそうです。
基本的には、一生、働き続けるわけですから、これからの時代は、仕事選びの基準も変えていく必要があるでしょう。