先日、あるビジネス誌に日系エアラインのサービスが低下しているというコラムが掲載されていました。これについては様々な意見があるようですが、日系エアラインのサービスの位置付けが相対的に変化しているのは事実といってよいでしょう。
サービスレベルの国際標準化が進んでいる
当該コラムは、PV(ページビュー)を意識したのだと思いますが、中国系エアラインの躍進(vs日本の衰退)というトーンで書かれています。中国は経済発展を続けており、もはやかつての中国ではありませんから、各種サービスの質は急速に洗練されたものとなりつつあります。
しかし、これは中国だけに限った話ではありません。
日本にいるとあまり意識しませんが、ここ10年における世界のグローバル化の進展には目を見張るものがあります。特に顕著なのが、エアラインやホテルなど、各種サービスの標準化です。
かつては経済的に遅れている国のサービスはひどいというのが常識でしたが、最近ではこうした格差が急速に縮小しています。
もちろん国としての経済力の格差は依然として存在しているのですが、エアラインや空港、ホテルなど、多くの人が利用するサービスについては、おおよその国際標準が確立しており、どの国のサービスを利用しても、それほど大きな違いを感じなくても済むようになっているのです。
その点からすると、日本企業が提供するサービスは、いわゆる日本型のままというケースが多く、良い意味でも悪い意味でもガラパゴス化が進んでいます。
コラムではビジネスクラスのラウンジのサービスについて言及していましたが、日系のサービスレベルが低いのかはともかく、いわゆるグローバル標準と比較すると、ラウンジの造り方やオペレーションが少々かけ離れているのは事実といってよいでしょう。
日本のエアラインは相変わらず高コスト体質
かつて日系のエアラインは、運賃はバカ高いものの、至れり尽くせりのサービスを売りとしてきました。しかしグローバル化の進展によって、乗客が求めるサービスも変わってきています。
一方で日系エアラインの高コスト体質は今も同じで、諸外国のエアラインと比較すると、オペレーションに2倍近くのコストをかけています。機材はどこも同じものを使っていますから、国内施設にかかる費用や管理部門の経費などが重くのしかかっている可能性が高いでしょう。
こうした高コスト体質を維持したまま、同じようなサービスを続けようとすると、必ずどこかに歪みが出てきます。先日、久しぶりに日系エアラインに乗りましたが、かなり無理をしてコストを削減しているケースが散見されました。本来であれば、会社全体をスリム化することを優先すべきですが、一部では顧客サービスにシワ寄せが来ているようです。
日本の国際的地位が低下していることや、長年の稚拙な航空行政の結果、多くのエアラインが日本路線から撤退していきました。一方、旺盛なインバウンド需要によってアジアからの便が増えたことで、何とか航空市場を維持している状況ですが、これだけに頼っているわけにもいきません。
外国の主要都市に行く際に、ソウルや香港を経由しないと行けないというケースも増えてきており、日本の地盤沈下が進めば、この傾向はさらに顕著になるでしょう。日本のエアラインにとって、ここ数年のインバウンド特需は、本当の意味でビジネスをグローバル化するための最後のチャンスといえそうです。