経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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年金は満額もらえるとは限らない

加谷珪一の年金教室 第3回

 前回は、国民年金と厚生年金の違いや、もらえる年金額のおおよその目安について説明しました。しかし、すべての人が年金を満額もらえるわけではありません。未納期間があったりすると、その分だけ年金は減らされてしまいます。

未納期間があるとその分だけ年金は減る

 前回も少し触れましたが、公的年金の受給資格を得るためには、10年以上の納付期間が必要となります。この期間に達していないとそもそも年金がもらえません(以前は25年とかなり長期でしたが、大幅に短縮されました)。

 しかし年金を満額受給するためには40年間、保険料を納める必要があります。20歳で加入してから一般的な定年である60歳まで途切れることなく保険料を納めなければなりません。もし保険料が未納という月があった場合には、その分だけ最終的な年金額から差し引かれていきます。

 減額は基本的に未加入期間に比例すると考えて差し支えありません。40年間は480カ月ですから、未納期間が48カ月ある場合には1割減となります。

 サラリーマンでひとつの会社にしか勤めたことがなければ、未納という問題はそうそう発生しないと思いますが、転職経験がある人は要注意です。新しい会社に移った際に、年金の手続きなどが遅れ、知らないうちに未納期間が発生している可能性があります。また国民年金の人は自分で納付しますから、自分で手続きをしないと未納になってしまいます。

 意図しない形で未納期間があるというのはひじょうにもったいない話ですから、未納期間がないかチェックしておいた方がよいでしょう(具体的なチェックの方法は次回に解説します)。

 もし未納期間があった場合、後で納付することが可能ですが、2年という制限があります。それより前の未納については諦めるしかありません。

 しかし2018年9月末までなら、申請することで5年遡って後納することが可能となっています。該当する人は急いで検討した方がよいでしょう。

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公的年金の財政が厳しいのは事実だが、それでも保険料は払った方がよい

 若い世代では、日本の年金は破綻してしまうのだから、保険料を納めても意味がないと考えている人が少なくありません。後日、このコラムでも取り上げますが、日本の公的年金の財政が厳しい状況にあるのは事実です。

 筆者は、近い将来、年金の減額が十分にあり得ると考えていますが、客観的に見た場合、年金が完全になくなってしまうほどの状況ではありません。
 日本の財政状況について無意味に楽観視する人が多い中、厳しい見方ができるというのはよいことですが、過度に悲観的になる必要はありません。

 まとまった資産を持たない多くの人にとって、年金は老後の生活を支える最後の砦となります。貧困などやむを得ない事情がある場合を除いて、意図的に保険料を未払いにするのはやめた方がよいでしょう。

 国民年金の納付については、一部もしくは全額を免除する制度があります。納めなかった分は減額されますが、その期間は未納とはならず、受給資格期間には算入されることになります。生活が苦しい人は検討する価値があるでしょう。

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