再検証「アベノミクス」第3回
当初、アベノミクスはめざましい成果を上げたかに見えました。日銀は2013年4月の金融政策決定会合において、大量の資金を市場に供給する量的緩和策を開始。その結果、日銀が金融機関に供給するマネーの総量を示すマネタリーベースは、年間80兆円のペースで増加することになりました。
為替と株式がすぐに反応
こうした政策に真っ先に反応したのが、為替と株式です。
安倍政権発足前には、為替は1ドル=80円台でしたが、2013年には1ドル=100円まで下落し、2015年には1ドル=120円となりました。株価もこれに合わせて大きく上昇しています。
2012年の段階で1万円を割り込んでいた日経平均は、2013年後半には1万5000円台に乗せ、2015年には2万円を突破しました。
為替市場がすぐに反応したのは、日銀によるマネー供給によって円の価値が減価すると市場が判断したからです。実際、マネタリーベースの金額は半年で30%増加し、為替は同じ期間で約20%減価しました。
円が安くなると、その分だけ輸出産業の見かけ上の売上高や利益が増加しますから、それに合わせて株価も上昇することになります。市場にインフレ期待を持たせるという当初の目標はある程度達成できたわけです。
2%というインフレ目標も途中までは実現できるかに見えました。円安によって輸入物価が上昇し、国内の物価が上がり始めたからです。
途中、失速したものの米国経済に助けられた
物価も当初は堅調な動きでした。国内の消費者物価指数(生鮮食料品を除く総合)は、アベノミクスが始まるまでは前年同月比マイナスでしたが、2013年6月からはプラスに転換。2014年5月にはプラス1.4%まで上昇し(消費税の影響を除く)、2%の物価目標達成も視野に入ってきました。
しかし2015年に入ると状況は一変し、株価は下落、為替は円高、消費者物価指数はマイナスと、完全に歯車が逆回転を始めてしまいます。
GDP成長率も鈍化しました。アベノミクスがスタートした2013年度の実質GDP成長率はプラス2.6%となり、前年度のプラス0.8%と比較すると大きく伸びましたが、2014年度はマイナス0.3%に転落。その後は少し持ち直し、2015年度はプラス1.4%、2016年度は1.2%、2017年度は1.6%という状況が続いています。
2015年から景気が持ち直したのは、米国経済が絶好調で輸出が増加したことがもっとも大きな要因ですから、アベノミクスと直接関係するのかは微妙なところです。量的緩和策を中心とする金融政策は、当初予想されたほどの効果は発揮しなかったと考えるのが自然でしょう。
量的緩和策が十分に効果を発揮できなかった原因については次回以降で解説していきます。