加谷珪一の投資教室 実践編 第15回
世の中には様々な投資手法があります。いわゆる投資本を見れば、それぞれのやり方について詳しく知ることができるはずです。しかし、世の中で紹介されている投資手法の多くは、少額投資家のためのものであり、投資によって大きな資産を作る目的には向いていないというケースも少なくありません。
現実問題として、ある程度、資金量が増えてくると、選択できる投資手法は限られてしまいます。ちょっとした楽しみとして株式投資を行うのであれば構いませんが、本気で大きな資産を作ろうと思っているのであれば、お金がないうちから、お金を持った後のことまで考えて、投資手法を選択した方がよいでしょう。
超割安銘柄への投資手法が活用できる場面は限定的
資産額が大きくなってくると、現実的に選択しにくくなる投資手法のひとつに、PBRがが1倍割れしているような割安銘柄への投資があります。
小型株の世界では、それなりに利益を上げていても、市場であまり評価されず、低いバリュエーションのまま放置されるというケースが出てきます。
こうした銘柄が放置されるのは、市場が完全に効率的ではないということが理由ですが、そうはいっても相場が盛り上がってくれば、どこかのタイミングでこうした銘柄にも注目が集まることになります。
そのタイミングは、主要銘柄の多くが一通り買われた後ということが多いのですが、出来高の小さい割安株がひとたび注目されることになると、株価はあっという間に上昇することになります。それを狙って、目立たないうちから資金を仕込んでおくというのが、低PBR投資の醍醐味です。
この投資手法自体は非常にシンプルなので、誰にでも応用が可能です。しかしながら、現実にこの投資手法が使える場面はそれほど多くないでしょう。
資金量が多いといろいろと面倒なことが増えてくる
少額投資をしているうちはよいのですが、投資金額大きくなってくると、こうした銘柄は、流動性の低さがネックになり投資に躊躇するようになってしまいます。もし期待に反して相場が上昇せず、割安銘柄が割安のままだった場合、これらの銘柄を大量に売却して現金化するのはそうたやすいことではありません。
自分の売りで株価をさらに下げてしまうので、平均的な売却価格は大幅に下がってしまうでしょう。こうした悩みは機関投資家だけのものと思っている人も多いかもしれませんが、そうでもありません。閑散とした銘柄の場合、数百万円レベルからこうした問題が発生してくる可能性が十分にあります。
時間軸でも苦労します。こうした銘柄が開花するまでにはかなりの時間が必要となります。投資した銘柄がなかなか上昇しない中で、主力銘柄は次々に高値を更新していきます。その中でじっと上昇するタイミングを待つというのは、かなりの精神的タフさが求められます。
こうした手法で資産を増やしていこうとする、必ずどこかのタイミングでカベにブチ当たってしまうでしょう。
投資信託などを運用する機関投資家がつまらない投資ばかりしているというのは、ファンドマネージャの手腕という問題もありますが、資金量が多く、選択できる投資手法が限定されているという側面もあるのです。
少額投資に向いた手法を多用している場合には、いずれ、その手法は使えなくなるということも、頭に入れておいた方がよいでしょう。