米国が日本を含む各国に対して、イラン産原油の輸入を停止するよう求めていることが明らかとなりました。日本はイランと「独自外交」を行っており、米国とは一線を画してきましたが、米国とイランの関係が再び悪化したことから、日本にも圧力がかかっています。
以前は米国とイランは友好的だった
米国とイランは核開発をめぐり対立していましたが、オバマ政権時代の2015年に核合意が締結され、イランとの関係修復が図られました。しかしトランプ大統領はこの合意を強く批判しており、今年5月には核合意を破棄し、対イランの経済制裁を再開すると一方的に発表していました。今回はこの決定を受けた措置と思われます。
イランと米国は、イランが王政だった時代には非常に親密でしたが、イラン革命後、同国が反米に転じたことで関係は悪化していました。
日本は王政時代には、米国とともにイランに積極進出しており、IJPC(イラン・ジャパン石油化学)という大型プロジェクトも実施していました(最終的にIJPCは事業を清算)。また1950年代には、英国がイランに対して石油輸出を封鎖した際、出光興産があえてイランから石油を買い付けたことなどもあり、イランは日本に好印象を持っているとも言われます。
こうした経緯から、日本は米国がイランと対立した後も、イランとの関係を続けてきましたが、当然、こうした行為は米国と利害が対立することになります。
イランとの関係は数少ない日本の独自外交?
日本は中東から大量の石油を輸入していますが、そのほとんどはサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)からとなっており、イランの重要度はそれほど高くありません。しかし、イランとの関係は、米国追従と揶揄される日本にとっては数少ない独自外交のひとつということもあり、政府には関係を失いたくないという考えがあります。
しかしながら、日本とイランの関係はもともとイランと米国が親密であったことがベースになっていますし、日本にとっては米国の意向を無視するわけにもいきませんから、政府は難しい立場に置かれることになってしまいました。この件について世耕経済産業相は、「外交上の理由から言及を控えたい」と述べるにとどまっています。
一方、イランとの関係維持を望むEU各国は、イランと取引のある欧州企業を保護する姿勢を示しており、米国に対して制裁を実施しないよう強く求めています。
イランからの石油の輸入は全体の5%程度なので、仮に日本がイランからの輸入を中止した場合でも、すぐに代替の調達が可能であり、経済にはそれほど大きな影響は与えないでしょう。今回の一件は、純粋に外交上の問題ということになります。