日本のビジネスマンは、転職に消極的である一方、現在の仕事に対する満足度も非常に低い。そんな実態が、大手SNSによる調査で明らかになりました。
満足度が低い国にはある特徴が
調査を行ったのは、ビジネスマン向けSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)大手の米リンクトインで、対象は世界26カ国の会員です。
それによると、現在の仕事に対して満足していると答えた人の割合は、全世界平均は72%でしたが、日本人は65%と下から2番目でした。また、非常に満足しているという人の割合も日本は下から3番目と低い結果になっています。
日本人が現在の仕事に満足していないというのは、他の調査結果でも同じ傾向が見られますから、特に驚くべきことではありません。
こういった比較調査は質問の方法や社会慣習などに大きく影響されます。満足度が低いという調査結果が出たからといって、日本の職場環境が良くないと簡単に結論付けるのは避けた方がよいでしょう。
ただ、この調査結果で日本と近い位置にいる国を見てみると、一定の法則性が見受けられます。その意味では、完全とは言わないまでも、この調査結果には普遍性があると考えることもできます。
それは日本と同様、満足度が下位に位置付られた国の多くは、経済的、社会的に問題を抱えている国だからです。
仕事に満足している人の割合を問うアンケートでは、日本は下から2番目でしたが、もっとも低かったのはトルコです。そして、日本のひとつ上はイタリアとなっていました。
トルコはこれまで順調な経済成長を実現しており、EU加盟を目指しているのですが、国内に少々問題を抱えています。古い価値観と現代的価値観の折り合いがなかなか付けられないのです。
エルドアン政権は、反体制派の動きを封じるためにフェイスブックを遮断したり、「女性は公の場で大声で笑うべきではない」と幹部が発言するなど、最近のトルコ社会の雰囲気はかなり息苦しいものになっています。
トルコはもともとイスラム色の強い国でしたが、日本の明治維新に触発され、近代的な国作りを進めて今に至っています。
その意味では日本と共通点がありますし、トルコほどではないにせよ、古い価値観からの脱却が進まないという意味では、今の日本もトルコと同じ課題を抱えています。
イタリアはトルコよりも経済水準の高い先進国ですが、現在、経済危機の最中です。またイタリアは、ドイツや北欧などと比べると、地縁血縁やしがらみが多く、合理的な社会システムになっていません。女性の社会進出も、欧州の先進国の中では突出して遅れています。
職業選択の多様性を増やしていく方が望ましい
こうして見てみると、トルコやイタリアそして日本のビジネスマンの満足度が高くないというのは、まったくの偶然とはいえない可能性があります。やはり何らかの社会的閉塞感が影響していると考えてよいでしょう。
また、日本と並んで非常に満足しているという割合が低いのはロシアと中国ですが、中国に至っては、そもそも民主国家ですらありませんから、満足する人の割合が低いことは容易に想像できます。
同じ調査では、日本人は転職に対しても非常に消極的であるという結果が出ています。現在の仕事に不満があるのに転職に消極的ということは、転職したくてもできないという状況にあることが想像されます。
仕事に対する不満は誰にもあるものですが、そこに選択肢がないという状況が加わると、不満は倍増する可能性があります。
終身雇用の慣行は徐々に崩れてきているとはいえ、それでも新卒一括採用という制度はまだまだ健在です。一部の業界や職種を除くと、相対的に転職は不利になるケースが多いと考えられます。
終身雇用は、いい面もありますが、柔軟な職業選択の自由も奪ってしまいます。同じ会社に一生勤められる保証はないが、いつでも転職できるという社会と、一旦新卒で入社できればとりあえず定年まで働けるものの、他に選択肢がないという社会。
人によって価値観は様々でしょうが、日本は成熟国家になっていることを考えると、多様性を尊重する社会に移行していった方が、トータルの満足度は高くなると考えられます。