保育施設の建設が、地元住民の反対で難航するケースが相次いでいるそうです。子供の声がうるさい、送迎時の車による路上駐車が迷惑といったあたりが、その理由とのことです。
クレーム処理も事業者のノウハウのひとつ
保育施設については、かなり以前から慢性的な不足が続いており、待機児童が減らないという問題が起きています。
地方自治体の選挙などでは「待機児童を減らします!」という公約をよく耳にします。皆が保育施設の増加を望んでいると思いきや、一部の周辺住民はまったく逆のことを考えていたわけです。
こういったケースについては「本当なのか?」という声もあるようですが、人口減少に悩む過疎の地方でも、地域住民の反対で保育施設が頓挫というケースはあるようなので、結構な頻度で発生している問題と思われます。
子供の声がうるさいのかについては、個人的には、子供なのでやむを得ないと思いますが、感じ方は人それぞれです。反対が出ることそのものを否定しても、問題の解決にはならないでしょう。
ただ従来の保育施設が、なかなか民間には開放されず、社会福祉法人という団体が半ば独占的に事業を行ってきたという状況を考えると、運営側にこうしたトラブルを回避する能力が少ないのではないかという気もします。
世の中には、周辺住民からクレームが出る施設というのは無数にあります。一般的な飲食店一つとっても、周辺とのトラブルは付きものです。事業者というのものは、その事業に精通しているだけでなく、こうしたトラブルを回避するノウハウも身につける必要があります。
企業の活動は利益に直結していますから、立地戦略がうまく進まないことは、即業績悪化となります。このため、周辺とのトラブルをどのようにすれば最小限にすることができるのか、企業は常に頭を悩ませていますし、それ故に、ノウハウもたまってくるわけです。
適度な競争はサービスを向上させる
しかし、民間の参入が規制され、政府や自治体からの多額の補助や優遇を受けている社会福祉法人の場合、民間企業のような苦労を経験しません。
民間企業の中には、法律で義務付けられてもいないのに、自社の財務状況を公開するところがたくさんあります。それは積極的に情報公開をすることで、社会的な信用得たいと考えるからであり、そこには、厳しい競争に勝ち抜かなければならないという危機感があります。
しかし社会福祉法人は、多額の税金が投入されているにも関わらず、これまで一切の情報公開義務がありませんでした。一部の優良な法人以外は、財務諸表を公開しているところはほとんどありません。国が主導してようやく財務情報の開示に動き始めている段階です。
保育施設に反対する理由のひとつに、送迎の車による違法駐車があるといわれています。もし違法駐車が事実であれば、そうした行為を行う親に対しては、法的対処をするということが原則となります。
また施設の側も、迷惑駐車といった行為があった場合には、受け入れを拒否するといった毅然とした態度も必要でしょう。
一方で、子供の送迎マナーについて、どのように利用者に理解してもらうのかという点も含めて、事業者のノウハウであるとも考えることができます。公務員的な発想に染まっている社会福祉法人の職員の場合には、十分な対処能力がない可能性があります。
こうした分野にも、民間の知恵を生かす工夫が必要と思われます。独占的な公的サービスと、適度な競争のある民間サービスでは、民間の方が高いパフォーマンスを出すことは歴史が証明しています。
すべてを自由化して過度な競争を強いる必要はまったくありませんが、保育の分野における民間開放はもっと推進されるべきでしょう。