電気料金の高騰が、日本の経済にとって深刻な問題となってきました。
2014年7月末、北海道電力が電気料金の再値上げを申請しました。昨年の値上げから1年も経っていないのに、再度の値上げ申請です。他の電力会社も値上げを検討中とのことですが、これは日本の供給力不足に拍車をかける可能性があります。
原発の再稼働だけでは値上げを回避できない
北海道電力が申請した今回の値上げ幅は、家庭向け電気料金で約17%、企業向けなど大口部門で約23%となっています。
前回の値上げでは、家庭向けで約8%、企業向けで約11%の値上げを実施していますから、1年の間に、家庭向けでは約25%、企業向けでは約35%も値上がりすることになります。
同社だけでなく、電力各社が再値上げを申請しているといわれており、各社が再値上げを行えば、震災前と比較すると電気料金は全体として1.3倍~1.5倍になる可能性が高いわけです。
一部には原子力発電所を再稼働すれば値上げを防げるという主張もありますが、残念ながら事態はもっと深刻です。原発が停止していることは値上げの理由のひとつではありますが、もっとも大きいのは火力発電所の燃料であるLNG(液化天然ガス)の価格高騰であり、今のところ根本的な対策が見当たらないからです。
あまり知られていませんが、日本は原発の停止以降、基本的に節電で対処しているのでLNGの輸入量は実はそれほど増えていません。
しかし、原発の停止と円安によってLNG価格が高騰していることから、火力発電所の燃料代は増える一方です。LNG価格は震災前から比較すると約2倍となっており、これが電力会社の経営を圧迫しているのです。
仮に、原発をすべて再稼働させたとしても、日本全体の原発依存度は震災前で約3割ですから、再稼働による効果は限定的です。また、LNG価格は原油価格と連動しているものも多く、原油価格も高騰している今、以前のように安く調達できる見込みはありません。
電力各社は、安価な米国産LNGの調達ルートの確保などを行っていますが、米国は輸出規制の解除を始めたばかりですから、すぐに米国産LNGが大量輸入される状況にはならないでしょう。
日本は深刻な供給不足へ
現在、日本は深刻な人手不足になっています。一部の業界では高い賃金を払っても人を確保できず、十分にサービスを提供できない状態になっています。
ここに電力料金の再値上げが加わるとさらに状況が悪化します。人手不足に、電気料金の高騰が加われば、深刻な供給不足に陥ってしまいます。
そうなってくると、物価は上がるのに経済は成長しないという、いわゆるスタグフレーションの状態に陥ってしまう可能性を考慮しなくてはなりません。
一旦スタグフレーションの状態になってしまうと、おそらく量的緩和策を追加実施しても、ただ物価を上昇させるだけで終わってしまう可能性が高くなります。
また供給不足な状態ですから、公共工事で需要を作り出しても効果がありません。つまり、従来の経済政策が、ことごとく機能しなくなるかもしれないのです。
電気料金高騰の直接の原因は震災による原発の停止ですが、背景には、地域独占という非効率な状況を長年放置してきたという構造的な要因があります。
また日本の産業全体も、知識産業への転換を怠るという構造的な問題を抱えています。本来であれば、日本は、従来型製造業で韓国や中国と争う必要などなかったのです。
リーマンショックや震災といった外部要因でこうした構造的な問題が一気に表面化してしまったと考えるのが自然でしょう。