お金持ちを科学する 第10回
今回からは、富を生み出すメカニズムについてもう少し掘り下げて考えてみたいと思います。
富というものを体系的に理解するためには、経済におけるフローの概念とストックの概念をしっかりと区別することが重要です。両者の本質的な違いを理解できているのかどうが、お金持ちになれるかどうかの分かれ目となります。
お風呂のお湯にたとえると
フローとストックの違いについて、何となくイメージできているという人は多いと思いますが、それでは不十分です。
「フロー」というのは、モノやお金の流れを示す概念です。もっと具体的にいうと、ある一定期間の間に流れたモノやお金の量ということになります。
GDP(国内総生産)や企業会計は通常、1年をひと区切りにしますから、多くの場合、フローの単位は1年です。さらに短いタームとして四半期を用いることも多くなっていますが、基本は1年と考えてよいでしょう。
これに対して「ストック」というのは、ある時点において、フローの結果として蓄積されたモノやお金の量のことを指しています。先ほど、GDPや企業会計は1年単位であると説明しましたが、ストックはその結果ですから、たいていの場合、基準値としては1年の終わりが用いられます。企業会計であれば3月末時点などが基準となるわけです。
フローとストックの話はよく、バスタブに溜めるお湯に例えられます。蛇口から流れ出ているお湯の量がフローで、その結果、バスタブに溜まったお湯の量がストックです。
フローの場合には、一定期間に流れたお湯の量ですから、1分間で2リットルの流量があれば、フローの量は毎分2リットルということになります。もしお湯を20分間流し続ければ、最終的にバスタブには40リットルのお湯が残りますから、20分後という一時点でのストック量は40リットルとなるわけです。
フローの大きさとストックの大きさを混同すべきではない
毎年、稼ぐ年収は、蛇口から出てくるお湯の量とみなすことができますからフローとなり、結果として貯まった資産はバスタブに貯まったお湯の量なので、これはストックとなります。
話を単純化すると、毎年の年収を貯蓄した結果がストックということになりますが、さらに厳密に言えば、毎年の年収から税金や生活費を差し引き、残りを蓄積した結果がストックであり、これが最終的な富の大きさを決定します。
以前、このコラムでは、年収が高いことと、資産が多いことを混同すべきでないという話をしましたが(過去記事「お金持ちには、いろいろな種類がある」を参照してください)、これはフローの大きさとストックの大きさは必ずも一致しないという意味になります。
一般論としては、高い年収があれば、多くを貯蓄できますから資産額も大きくなるのですが、現実はそう簡単ではありません。
そうなってしまう理由は、税金が存在していることと、ストックの金額そのものが大きく変動するからなのですが、このあたりについては次回以降に解説したいと思います。