加谷珪一の超カンタン経済学 第13回
これまではGDPを構成する要素として、消費(C)、投資(I)、政府支出(G)の3つを取り上げてきました。しかし、現実の経済にはもうひとつ、大きな項目があります。それは輸出入です。
輸出があるということは国内以外にも需要が存在するということ
日本は典型的な輸出大国でしたが、たくさんのモノを輸出しているということは、国内で消費する分以上の生産を行っていることを意味しています。
輸出があるということは、国内以外にも需要が存在しているということです。輸出で得た代金は国内に落ちますから、国内の所得はその分だけ増加します。つまり輸出はGDP(国内総生産)のプラス要因となります。
一方、輸入はその逆になります。国内で生産する分よりも、国内の需要が大きく、足りない部分を輸入で補っていると解釈できます。外国に支払ったお金は国内には落ちませんから、GDPにとってはマイナス要因です。
日本のような国は、原材料を輸入して製品を作り、それを外国に輸出しています。輸入の多くは輸出を行うためですから、現実はもう少し複雑になります。
最終的には、輸出から輸入を差し引いた純輸出の分だけGDPにプラスになると考えます。これを式にすると以下のようになります。
GDP(国内総生産)=消費(C)+ 投資(I)+ 政府支出(G)+ 純輸出(NX)
純輸出は貿易収支と言い換えることもできます。純輸出の分だけGDPが上乗せされるわけです。
経済規模が大きくなれば必然的に輸入が増える
一般的に輸入の額は、GDPの大きさに比例すると言われています。経済規模が拡大して社会が豊かになると、コストが安いものは海外から調達した方が合理的です。余ったお金はより付加価値の高い製品やサービスへの支出に回せるからです。
現在、世界でもっとも大きな経済大国は米国ですが、米国はずっと貿易赤字が続いています。貿易赤字が大きいと、一部の国内産業が外国に負けてしまいますから、政治的な動きを招きやすくなります。トランプ政権が保護主義的な政策を掲げているのはそのためです。
しかしながら、大きな流れとして、経済大国が輸入を拡大するのはごく当たり前の現象といってよいでしょう。これは日本も同じで、社会が豊かになるにつれて輸入の割合が高まっていくのが普通です。つまり輸入の多さは、その国の成熟度や豊かさと密接な関係があるわけです。
本連載ではのちほど国際収支についても解説していきますが、貿易赤字の大小は、直接、経済成長とは関係しません。一般論としては、輸入が多いと良くない、輸出を増やした方がよいと言われますが、経済学的には必ずしもそれが正しいとは限らないのです。
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