経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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実は高齢者にも最適? 狭小アパート・ブームの背景を探る

 最近、床面積がわずか9㎡(6畳)という狭小アパートが話題となっています。総人口の減少が都市部への人の移動を促すことはほぼ確実であり、都市部における住宅供給は重要なテーマといってよいでしょう。これまで厄介者扱いされてきた、狭いワンルームマンションの位置付けについても再考が必要となるかもしれません。

投資家にとっても、居住者にとってもメリットがある

 このところ、狭小アパートに関する話題を耳にするケースが多くなってきました。狭小アパートに特化したある不動産ベンチャー企業は、約5年で70棟もの物件を手がけるまでに成長しています。

 こうした狭小アパートは、部屋のスペースが極限までスリム化されています。

 浴槽はなくすべてシャワーブースが設置されており、洗面台もありません。天井にはロフトがあり、寝るときには梯子でロフトに登ります。こうした工夫の結果、9㎡という面積にもかかわらず、洗濯機と冷蔵庫を室内に置くことが可能となっています。

 若年層の単身者の場合、あまり湯船にはつからないでしょうし、台所で歯磨きや洗面をしている人も多いかもしれません。一方で、屋外の洗濯機置き場には抵抗感があると思います。

 最近では、いわゆる「ミニマリスト」がブームになるなど、ムダなものにコストをかけたくないという人が増えています。どうせ広い家に住めないなら、家賃が安く機能的なものがよいと考える居住者が一定数存在しているのは間違いありません。

 投資家にとっても、同じ広さの土地で、より多くの戸数を確保できますから(入居者が確保できればとの条件付きですが)より高い利回りを狙うことができます。

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高齢者向けの住居との共通点も

 9㎡となると、かなり特殊なケースかもしれませんが、狭い物件に対するニーズは、今後さらに拡大すると筆者は考えています。その理由は、総人口が減少すると、都市部に人が流入する結果となるからです。

 実際、東京都では千代田区、中央区、港区といった都心部で人口が急増する一方、郊外の区や市では人口があまり増えていません。これは地方も同じで、全体の人口が減りながら、都市部への人口集中が進むというのが、今後の基本的な流れといってよいでしょう。

 そうなると都市部では居住者のニーズに合った安価な住宅が不足するという事態が発生します。狭小アパートはそうしたニーズをうまく拾った物件といえます。

 自治体の中には、住環境の悪化を懸念し、ワンルーム・マンションの建設を規制しているところも少なくありません。規制前に建設された狭いワンルームマンションは、不動産投資家の間では、不良債権予備軍ともいわれてきました。しかし、ここまで狭いアパートが人気となっている現状を考えると、狭いワンルーム・マンションに再利用の価値が出てくる可能性もあります。

 先ほど、若い単身者はシャワーだけでよいという話をしましたが、実はこれは高齢者にも当てはまります。高齢者は転倒の危険などがあるため浴槽に入らず、椅子に座ってシャワーを浴びるのがベストです。

 また住宅の面積が狭い方が、掃除などの手間かからず、高齢者の生活負担を軽減する効果があります。浴槽なしの省スペース物件というのは、実は若者向けだけとは限らないのです。時代は大きく変わっていますから、発想の転換が必要でしょう。

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