経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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かつての秋葉原駅前を彷彿とさせるアマゾンのパーツ販売

アマゾンに出店する中国事業者による価格破壊 その3

 前回は、中国企業とアマゾンによる価格破壊の例として5000円で買えるダンプトラックのラジコンを紹介しました。最終回となる今回のテーマは工具類やパーツ類です。

これまでは米国系企業であるモノタロウの独壇場だったが

 工具類やパーツ類は、ネット販売との親和性が高く、日本ではモノタロウが有名です。モノタロウは、米国の資材販売会社であるグレンジャーの子会社で、住友商事と深い関係を持っています。日本風の名前にしたことも功を奏し、今や工務店にとってはなくてはならない存在といってよいでしょう。

 ただモノタロウの場合、既存のメーカーや卸との関係も良好で、従来の流通ルートの脅威にはなっていません。これが同社の強みではありますが、そうであるが故に、積極的な価格破壊を仕掛けるのが難しいという側面もあります。

 こうした部分に割って入ろうとしているのが、アマゾンとそこに出店する中国の事業者です。アマゾンではUxcellという企業が、パーツ類や工具などを低価格で販売しています(アマゾンのサイト)。

 同社は香港企業で、自社で運営する通販サイトもあります。詳細は不明ですが、自社では商品を持たず、メーカーと提携して商品を販売する形態と考えられます。本体のサイトでは、部品や工具だけでなく、自動車のアクセサリーや衣類、家電、時計などあらゆる分野をカバーしています。

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かつての秋葉原の雰囲気を醸し出す

 日本のアマゾンではこれらの商品のうち、パーツ類や工具類の品揃えが多く、固定に用いる金具や各種ネジ類、チューブ、ケーブル、モーターなど、あらゆる部材が揃っています。

 国内の代理店と思われる企業が在庫を持っているケースもあるようですが、そうでない場合には、中国から国際郵便で直送されてきます。在庫の有無によっては納品に時間がかかるケースがありました。

 かつて秋葉原駅前には「秋葉原ラジオストアー(すでに廃業)」など数多くのパーツ店が軒を並べており、世界各地からバイヤーが訪れていました。アマゾンにおけるUxcellの店舗は、こうした少々カオスで乱雑な販売現場をそのままネットに移行させたような雰囲気です。

 部品類や工具類は信頼性や安全性の問題があるので、工務店などプロにとっては、安ければよいというわけにはいかないでしょう。しかしながら、圧倒的な価格と品揃えがあり、ある程度の実績も積み上がってくるとなれば、話は変わってきます。

 日本の工務店はメーカーの下請け的な存在であり、必ずしも最終顧客が望む商品を提供する存在とは言えませんでした。だが、こうしたインフラが整ってくると、日本の工務店も、メーカーに関係なく商品を扱う、独立した事業者に変わっていくのかもしれません。

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