経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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幸福度ランキングが54位だった日本が考えるべきこと

 国連の関連機関がまとめた「世界幸福度ランキング」において、日本の順位がさらに低下しました。国内ではこうしたランキングに対する感情的な反発も大きいのですが、ただ反発するだけではゲームに勝つことはできません。
 これは個人の競争にも当てはまりますが、現実社会は足の引っ張り合いです。評価される項目が何なのかを的確に理解し、逆にそれを利用するというしたたかさが必要でしょう。

ランキング結果は一種のソフトパワーになる

 最新の2018年版ランキングによると、日本の幸福度は156カ国中54位で、前回との比較では3つ順位を下げました。日本の順位はかなり悪く、先進主要国では最低となっています。ちなみに、ドイツは15位、米国は18位、英国は19位、フランス23位となっています。

 日本の近くには韓国(57位)やロシア(59位)が位置しています。両国の幸福度はそれほど高いとは思えませんから、やはり日本のランクは低いということになるでしょう。

 こうした国際比較に対しては、国内の一部から、日本の文化や現状を反映していないといった批判が出ているようです。
 しかしながら、こうした声は、ランキングを発表している主体に対してではなく、国内に向けられることがほとんどです。ランキングを出しているところに対して反論するならともかく、国内だけで批判を行ってもあまり意味はないでしょう。

 むしろ、こうしたランキングは、一種の権力(ソフトパワー)であり、反発するのではなく、逆に利用するというしたたかさが必要です。

 国内でランキングに対して反発の声が上がっているということは、ウラを返せば、こうしたランキングは、他国に対する強い影響力を持つということでもあります。つまり、こうしたランキングの仕組みを熟知し、ランクが上位になるよう工夫できた国は、外交や国際ビジネスにおいて、有形無形のパワーが得られるということです。

 ランキングなど、所詮は一定のルールに基づいたゲームに過ぎません。

 例えば、幸福度ランキングでは、1人当たりGDP(国内総生産)、ソーシャル・サポート、健康寿命、人生の選択をする自由、寛大さ、腐敗の度合い、などが評価の対象となっています。

 日本は1人あたりのGDPの順位を大きく落としていることや、人生選択の自由さなどの部分で点数を下げる結果となっています。逆に言えば、この部分を底上げする施策を行えば、こうしたランキングは自由に操作することが可能なのです(他国との比較が情報分析においていかに重要なのかについては参考記事「すべての情報リテラシーの基礎となるタテとヨコ」を参照してください)。

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ランキングを熟知して、うまく利用したフランス

 ランキングを合理的に活用したよい例がフランスでしょう。フランスは自国の文化を武器にしている国だけあって、こうしたソフトパワーの威力をよく知っています。

 フランスは欧州ではあまり女性の社会参加が進んでいない国なのですが、それが災いして、世界経済フォーラムが発表している世界男女平等ランキングで大きく順位を落としていました。

 この事態を重く見たフランスは、結果に大きな影響を与える項目に的を絞り、女性の政治家を数値目標付きで増やすなど、安易といえば安易、現実的といえば現実的な方策を実施しました。その結果、ランキングの順位はみるみる上昇していったのです

 日本が対外的な交渉が苦手であることは多くの人が認識していると思いますが、対外的なパワーというのは、こうしたソフトパワーを抜きには語れません(表現は悪いですが、こうしたランキングが上位になれば、ドヤ顔で他国にお説教ができます)。

 フィギュアスケートの世界では、ポイントが高い演技をどれだけこなせるのかという部分で勝敗のかなりの部分が決まってしまいます。そのルールの是非について文句を言っても始まりません。ルールを熟知して、それをフル活用できた人が金メダルを獲得できるのです。

 これはビジネスや外交でもまったく同じことが言えます。各種の国際比較調査の特徴をよく理解し、それをうまく利用するしたたさがあれば、国際社会において有利に振る舞うことができます。ゲームとの割り切りがあれば、それで自国文化が破壊されるなどと心配する必要もないはずです。

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