加谷珪一の情報リテラシー基礎講座 第1回
世の中にはあらゆる情報が氾濫しています。ビジネスや投資で成功するためには、情報の洪水の中から正しい情報を選別するテクニックが必要となります。
情報を整理し、客観性の高い分析を行う基礎となるのが「タテ」と「ヨコ」の概念です。これはすべての情報リテラシーの基本中の基本ですから絶対にマスターしておく必要があります。
タテは時代を遡って状況がどう変化したのかを考える手法です。一方ヨコは、他者との比較を行うことを意味しています。国レベルであれば諸外国との比較、企業であれば他社との比較、人であれば他人との比較ということになるでしょう。
この話をすると「外国との比較は意味がない」「異なる時代との比較は無意味」「条件が違う企業を比較してもムダ」といった反論をたくさん受けます。
筆者はずっと情報に関係する仕事をしてきましたから、情報のプロであることを自認しています。また、個人的にも情報分析の手法をフル活用して、億単位の資産を形成することに成功しましたから、ハッキリと断言することができます。
タテとヨコで比較するというのは無意味どころか、世の中でもっとも有効な情報分析手段のひとつです。比較することに抵抗がある、もしくは比較することに意味がない、と思えるのであれば、極論かもしれませんが、情報分析やリテラシーという言葉は忘れた方がよいでしょう。そのくらい、この2つは大事なことです。
昔は○×という話はたいていウソ
タテの比較が重要なのは、物事の真実は、絶対値よりもその変化の中に見えてくることが多いからです。
時代を遡って比較し、変化が大きいと分析された場合には、社会や経済の仕組みが大きく変わろうとしている証拠ですから、重要性が高い問題だと認識することができます。一方、変化があまりなければ、それほど重要な話ではないと考えて大丈夫です。
具体的には次回以降で解説しますが、よく耳にするのが「昔は○×だったが、今はこうだ」という類いの話です。この手の話はたいていの場合、昔は良かったという思い込みであり、過去に遡ってデータを見ると、今と変わっていないというケースが大半です。
ヨコの比較は、他者と比較することで、問題をどう解決したらよいのかヒントを得ることが目的です。
違いが存在しているということは、そこには何らかの理由があります。すべてに当てはまるわけではありませんが、違いの理由を見つけ出すことができれば、現状を改善する手がかりになります。
タテとヨコの比較が無意味だという意見は、ほとんどの場合、そうだろうという本人の推測に過ぎません。実際に比較してもあまり良い結果が得られないこともありますが、たいていの場合、比較によって重要なヒントを得ることができます。
ちなみに、比較が無意味だと主張している人の中で、実際に多くのデータを検証した結果として無意味であると結論付けた人を、筆者はこれまで見たことがありません。
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