南米の独裁国家ベネズエラが何と仮想通貨の発行を表明しました。同国はマドゥロ政権による独裁的な政治運営で知られていますが、経済政策の失敗で制御不能のインフレに陥っています。
こうした状況を打開するため、仮想通貨による資金調達を決めたわけですが、グローバル市場からはその不透明性も指摘されています。果たして一連の施策はうまく行くのでしょうか。
産油国であるにもかかわらず、経済運営の失敗で激しいインフレに
ベネズエラは世界でも有数の産油国ですが、独裁政権によるずさんな国家運営によって経済はボロボロの状態です。国民からの支持を得るため政府はバラマキや価格統制を実施しましたが、これが逆効果となり、財政悪化と産業の衰退をもたらしています。外貨やモノが不足し、昨年は2000%を超える激しいインフレとなりました。
インフレになるとモノの値段が急激に上昇しますから、かつては多くの人が札束を持って買い物に行くという光景が繰り広げられました。しかしベネズエラの場合には様子が違っています。
同国では激しいインフレに紙幣の供給が追いつかず、日常的な決済に用いる現金すら不足した状態にあります。紙幣の供給体制が貧弱なせいもあるかもしれませんが、インフレを抑制するために、政府が意図的に現金の流通を規制している可能性もあるでしょう。
ところが、こうした状況に対して、国民は電子決済という対抗手段を選択しました。インフレの進行が進むにつれて、多くの決済アプリが登場し、今やベネズエラではほとんどの人がアプリで日々の決済を行うようになったといわれています。
ベネズエラはIT大国ではなく、貧弱な通信回線しかありませんが、それにもかかわらず電子決済が拡大しているのは、多くの人が日常生活にも不自由しているからです。また一部の資産家は、手持ちの資金をビットコインなどの仮想通貨に換えて、資産の保全を図っているともいわれます。
一昔前であれば、激しいインフレが発生すると、庶民がこれに対抗することはほとんど不可能でした。しかし、新しいテクノロジーによって、庶民でもインフレに対処することができるようになったのです。
仮想通貨の発行で一発逆転を狙うが、不透明性について指摘する声も
もっとも、政府にとっては対応が難しい時代に入ったともいえるでしょう。
もちろんインフレを引き起こしたのは政府ですから、自業自得といえば自業自得ですが、紙の紙幣が使われなくなると、インフレを制御することがかなり難しくなるわけです。
逆にいえば、こうした激しいインフレを引き起こさないよう、日頃から適切な経済運営を行う重要性が高まっているともいえるでしょう。
インフレに苦慮しているマドゥロ大統領ですが、彼は転んでもタダでは起きません。2018年2月20日、埋蔵されている石油や金を担保に、何と独自の仮想通貨の発行を表明したのです。
新しい仮想通貨「ペトロ」については、その信頼性について疑問視する声が多くありますが、こうした独裁国家が仮想通貨を発行したという現実を考えると、時代の変化を感じざるを得ません。
とりあえず政府は6400億円の調達を目指しているそうですが、これがインフレ抑制に効果があるのか、要注目といえるでしょう。