米トランプ大統領とムニューシン財務長官の発言によってドル円相場が大きく変動しています。一連の発言は多分に政治的なニュアンスが強いものですから、落ち着いた対応が必要でしょう。
ムニューシン氏は2018年1月24日、「弱いドルは良いことだ」と発言。市場では一気にドル安(円高)が進み、一時、1ドル=109円を割り込む展開となりました。メディアには「ドル安の時代が到来」といったタイトルが並びましたが、翌25日、今度はトランプ大統領が「強いドルが見たい」と正反対の発言を行い、一転してドルが買い戻されました。
今回の一連の発言は、政治的ニュアンスが強いものです。
ムニューシン氏の発言は、世界経済年次フォーラム(ダボス会議)の記者会見の場で出てきました。米国はトランプ政権になってから米国中心主義を掲げるようになっており、場合によっては貿易戦争も辞さないという勢いです。ダボス会議ではこうした米国のスタンスに対して批判が出るのは確実ですから、ムニューシン氏が先手を打ったものと考えられます。
ムニューシン氏はもともと緩やかなドル高論者であり、その方が米国にとってはメリットが大きくなります。米国は世界中から資金を集め、これをもとに経済を運営しています。ドル安になってしまうと、米国にお金が集まりにくくなりますから、これは米国にとって望ましいことではありません。しかしトランプ政権の支持者の中には、米国の製造業に従事している人も多く、彼等はドル安を望みますから、時には政治的な発言も必要となってくるわけです。
ムニューシン氏の発言によって予想外にドル安が進んだことから、今度はトランプ氏が火消しに回ったということでしょう。為替を巡る混乱は、トランプ政権そのものが抱える矛盾といってもよいものですが、こうした状況は当分続くと思われます。
しかしながら、米国のマクロ的な資金循環を考えた時、過度なドル安は米国にとってデメリットが多くなります。短期的にはドル安(円高)に振れることがあると思いますが、長期的にドル安が継続するというシナリオは、今のところ考えない方がよいでしょう。