経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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死去したイケア創業者が教えてくれる、モノマネは独創性につながるという真実

 イケア創業者のイングヴァル・カンプラード氏が2018年1月28日死去しました。イケアのビジネスモデルは独創的でオリジナリティの高いものですが、突然、ゼロからこのアイデアが浮かんだわけではありません。カンプラード氏から学べることは、模倣は独創につながるという真実です。

 カンプラード氏は、スウェーデンの小さな村の農場主の子供として生まれ、農場で幼少時代を過ごしました。幼い時から商才を発揮し、5歳でマッチの販売をスタートし、17歳の時には手広く事業を行うまでになっていました。商業学校を卒業すると本格的に実業家として歩み始めますが、当初、取り扱った商品は万年筆などオフィス関連用品でした。

 ところがライバルだった会社が、雑誌に美しい家具の広告を掲載しているのを見て、カンプラード氏は「私も同じやり方でやってみよう」と決心し、家具の分野に本格進出します。つまり、イケアの家具ビジネスは、ライバル企業の広告の模倣からスタートしたのですが、これは批判されるべきことでしょうか。筆者はむしろ逆だと考えます。

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 カンプラード氏には、ライバル社が出した広告のよさを理解する柔軟性と謙虚さがありました。それゆえに、美しいカタログで家具を販売していくという、新しいビジネスの手法をとことんまで追求し、世界的ブランドにまで成長させることに成功したわけです。

 イケア独特のショールームも同じです。ライバルとの値引き合戦が始まり、安値販売で品質を心配する顧客を安心させるため、やむにやまれずショールームを開設したのが始まりです。これが結果的にイケアのオリジナリティを象徴する販売手法に転化しました。最初から戦略的なショールームがあったわけではありません。

 独創性の高い仕事ができる人は、実は他人の模倣や試行錯誤も上手なのです。他人の良い部分を理解する能力があってはじめて、独創的なアイデアも具現化できると考えるべきでしょう。

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