中国の自動車メーカーが飛躍的に技術力を向上させています。これまで中国の自動車メーカーの技術力はお話にならない水準といわれてきましたが、状況は大きく変わりました。日本は中国のこうした状況を甘く見るべきではありません。
2017年に上海で開催された上海モーターショーでは、中国メーカーによる新製品の発表が相次ぎました。これまで中国の国産自動車といえば、外国メーカーを模倣したものが多く、グローバル市場で高い評価を得ることはありませんでした。中国人も同じように考えており、彼ら自身も、国内メーカーの製品よりも、GMやトヨタといった外資系メーカーの製品を好んで買っていたのです。
ところがここ1~2年でこうした雰囲気は大きく変わりました。中国製の自動車を購入する中国人が急増しているのです。その理由は、中国の自動車産業が日米欧と同レベルの技術力を身につけ、製品の品質が向上したからです。
中国の自動車産業は完全な国策となっており、GMやトヨタといった外国メーカーは、中央政府が所有する国営自動車メーカーと合弁を組まなければ中国に進出できません。中国側の狙いは、当然のことながら、合弁企業を通じて外国メーカーのノウハウを習得し、国産自動車の技術力を高めることにあります。当初は、技術移転に苦労しましたが、最近では国営企業単独でも品質の高い自動車を生産できるようになってきました。
一連の技術はさらに普及し、一般的な民営の自動車メーカーも高い技術力を持つようになりました。品質の高い自動車を大量生産するためには、部品メーカーや素材メーカーなど裾野の広い産業基盤が必要となります。中国メーカーが、品質の高いクルマを作れるようになったということは、中国の産業全体が質的転換を果たしたということにほかなりません。
今でこそ日本製品の品質は世界トップレベルですが、かつての日本製品は「安かろう悪かろう」と言われ、粗悪品の代名詞でした。日本企業は米国の技術をキャッチアップすることで世界トップに躍り出たわけですが、逆に言えば、どんなに優れた技術でも、いつかは後発の国にキャッチアップされるというのが世の常です。
ここ数年以内に、中国の国内メーカーが、トヨタやGMの強力なライバルになることはほぼ間違いありません。日本メーカーは、中国企業とコストで争うのではなく、自動運転システムやITサービスとの連携など、より付加価値の高い技術の確立を目指すことが重要でしょう。