景気の先行きについてさらに明るい材料が出てきました。内閣府が2015年6月8日に発表した2015年1~3月期のGDP(国内総生産)改定値は、物価の影響を除いた実質の成長率がプラス1.0%、年率換算ではプラス3.9%となり、速報値から大幅に上方修正されました。企業の設備投資が予想以上に好調だったことが要因です。
好調な米国経済の恩恵がようやく国内にも及び始めた?
四半期のGDPは、最初に速報値が発表され、20日ほど遅れて改定値が発表されます。改定値では、速報値の段階では反映できなかったデータが加わりますので、精度が上がります。
5月20日に、1~3月期のGDP速報値が発表されていましたが、法人企業統計の結果などが反映された改定値がこのほど発表されたわけです。
最新(1~3月期)の法人企業統計は、企業の設備投資額が前年同期比7.3%増の13兆1294億円と比較的高い伸びとなりました。このため、多くのエコノミストが改定値の上方修正を予測していたのですが、実際にその通りの結果となっています。
最近、エコノミストの予想が当たらないと何かと話題になりますが、設備投資については比較的予想がしやすいので、今回は大丈夫だったようです。
具体的には、企業の設備投資がプラス0.4%からプラス2.7%に大幅上方修正され、これがGDP全体を押し上げました。好調な米国経済を背景に、自動車などの販売が伸びていますが、その影響が国内にも波及してきたと考えてよいでしょう。
日本企業は、製造拠点の多くを海外に移しており、以前ほど円安の効果が得られなくなっています。このため、米国経済が好調でも、輸出がそれほど伸びないため、国内経済への波及効果も限定的でした。
ただ、現地生産に切り替えたといっても、日本からの部品輸出などはまだ残っていますし、現地で増産ができない場合には国内の拠点が対応するというケースは少なくないでしょう。こうしたことが総合的に作用したことで、設備投資が増えてきたと考えられます。
継続的な成長を実現するには、国内産業を活性化させる必要がある
1~3月期は期末にあたりますから、季節調整済みの数字とはいっても、期末の特需である可能性も否定できません。しかし設備投資の先行指標といわれる機械受注統計を見ても、引き続き4月の受注も好調なようです。
製造業の伸びが著しいことからも、増産に踏み切る企業が増えていることを伺わせます。来月も高い水準の受注が続けば、一過性のものではない可能性がさらに高まってくるでしょう。
もちろん、まだ安心はできません。この好調さは基本的には米国経済に大きく依存したものですから、日本が富を生み出しているわけではありません。本来は、内需がより活発になり、個人消費が大きく伸びる必要があるのですが、そこまでには至っていないのです。
これからよいシナリオが描けるとすると、やはり頼みの綱は米国経済です。好調な米国市場向けに製造業で増産が行われ、これをきっかけに設備投資がさらに増えていけば、中小企業も含め、賃金が上がってくるでしょう。そうなってくれば、個人消費も持ち直し、内需へと波及する道筋が見えてきます。
ただ、本格的に内需を掘り起こす状態になるにはまだまだです。外国人観光客の増加で、首都圏の小売店の販売は増えていますが、地方にはその恩恵がまだありません。また、外国人観光客の増加は、減少した日本人の消費をカバーしているだけですから、あらたな市場を創造したわけではありません。
やはり日本国内に新しいサービスが多数登場し、これまでなかったニーズを掘り起こす形で消費を刺激するというのが理想的です。そのためには、人材の流動化など、もう少し思い切った措置が必要となるでしょう。