経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. テクノロジー

エイベックスとサイバーエージェントが定額制音楽配信サービスを開始。ガラパゴスは変えられるか?

 日本は世界の主要国で唯一、音楽市場の大半がCDという国です。諸外国ではCD市場は消滅しつつあり、ネットでの音楽配信が主流です。また、著作権の問題から、海外のメジャーな音楽配信会社は日本でサービスを提供できない状態にあります。

 つまり日本は完全なガラパゴス状態になっているわけですが、こうした状況が変化するかもしれません。エイベックス・グループとサイバーエージェントが定額制音楽配信サービスに参入したからです。

海外では定額配信サービスがメジャーな存在
 エイベックス・デジタルとサーバーエージェントは2015年5月27日、共同で設立したAWA株式会社を通じて、定額制音楽配信サービス「AWA」をスタートしました。

 アンドロイドとiOSに対応しており、月額固定料金で洋楽・邦楽合わせて数百万曲の楽曲が聞き放題となります。ソニー・ミュージックエンタテインメントやワーナーミュージック・ジャパンなど、レーベルやプロダクション22社が参加しており、2016年末までに1000万曲を揃える予定です。
 料金は月額360円と1080円の2種類があり、料金によって、利用できるサービスの内容が異なっています。

 サービス内容は、海外市場における代表的な配信サービスであるSpotifyを意識したものとなっています。
 Spotifyとは、スウェーデン生まれの音楽配信サービスで、3000万曲以上のライブラリーの中から、聴きたい曲をいつでも聴くことができるというものです。すでに全世界で6000万人の利用者を確保しており、広告が入るといった制限はあるものの、基本的に無料で利用できます。
 また、月9.99ドルの利用料を払えば、制限なしに音楽を聴くことが可能となりますが、何と利用者の4分の1が有料会員だそうです。

 AWAも、アーティスト名や曲目から検索して音楽を聴くという従来からの機能に加え、Spotifyなど海外事業者によるサービスと同様、ジャンルごとにランダムに局を流す機能や、利用者が好みそうな曲を自動的に選び出して連続再生する機能などを実装しています。

photoawa

ガラパゴスは解消されるのか?
 海外ではこうした機能の登場により、利用者の音楽の聴き方が激変したといわれています。単発で曲を聴くのではなく、音楽を流しっぱなしにするという聴き方が主流になっているのです。AWAが普及すれば、日本でも同様の聴き方が中心となってくるかもしれません。

 実は、Spotifyはすでに日本市場に進出しているのですが、レーベルとの権利関係の調整が進まず、いまだにサービスを開始できていません。

 国内では、レコチョクやソニーが定額配信サービスを提供していましたが、ソニーは今年3月でサービスを終了してしまいました。同社は、Spotifyと提携して新しいサービスを開始したのですが、肝心のSpotifyが日本でサービスを提供できないことから、日本人はソニーの新サービスを使えない状況です。

 AWAが提供する楽曲数は当初は数百万曲です。非常に多いように思えますが、市場には非常にたくさんの楽曲数があります。このレベルですと、好きなアーティストをすべてカバーするのは難しいでしょう。

 しかしこれが1000万曲というレベルになってくると、それなりの存在感となってくる可能性がありますから、今後の展開には要注目です。

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