7~9月期のGDP(国内総生産)の数値をめぐって、ちょっとした混乱が起こっています。エコノミストの予想が連続して大きく外れており、市場が乱高下してしまったのです。
GDPは発表時期によって使用する統計が違う
12月8日の日経平均は、前の週の金曜日に発表された米国の雇用統計が極めて良い数字だったことから、円安ドル高が期待され、寄り付き直後に1万8000円を突破しました。しかし、朝に発表されたGDPの改定値が、下方修正だったことから、一転して売られる展開となってしまいました。
数値が下方修正されることはよくあることなのですが、今回、市場関係者が驚いたのは、エコノミストの事前予想が2度にわたって大きく外れたからです。
1回目は11月17日に発表されたGDPの速報値に関する予想です。民間のエコノミストの多くは、年率換算した実質GDP成長率についてプラス2.4%程度と予測していました。しかしフタを開けてみると、まったく逆のマイナス1.6%という結果でした。数字のズレというレベルではなく、プラス成長かマイナス成長かという根本的な部分で正反対だったことから、市場ではちょっとした混乱となってしまいました。
予想と実際の発表が大きくズレた原因は、在庫調整と設備投資です。
GDPは通常、1次速報(速報値)が最初に出され、続いて2次速報(改定値)が出されます。7~9月期についていえば、11月17日に発表されたのが速報値で、12月8日に発表されたのが改定値です。
民間エコノミストの予測には限界がある
GDPというのは、直接計測するものではなく、各種の統計資料を使って作成する2次統計です。GDPを公表する時期によって、使用できる統計が異なるため、速報値と改定値で数字が変わってしまうことはよくあります。
速報値の段階では法人企業統計などいくつかの統計が出揃っていませんから、これらについては、一定のルールに基づいて推定が行われます。
在庫調整と設備投資に関する推定方法が、内閣府と民間では異なっていた可能性があり、これが両者の乖離を生み出す原因となった可能性が高いと考えてよいでしょう。
民間エコノミストは、内閣府による速報値の発表後、そのデータを分析し、さらに12月1日に発表された法人企業統計の結果を組み合わせて、今度は改定値の予想を行いました。
法人企業統計では、在庫はあまり変動がありませんでしたが、設備投資は思ったよりよい数値でした。このため多くのエコノミストが、設備投資を上方修正し、それによってGDPも上方修正する形となりました。
ところが実際の数値はさらなる下方修正。今回の予想は固いと思われていただけに、下方修正が発表になると、市場で再び混乱が起こってしまったというわけです。
内閣府は法人企業統計の数字をそのまま使うわけではありません。統計上生じる誤差を調整するために様々な加工を行いないます。このルールが民間側と内閣府ではやはり異なっていたようです。
また今回の改定値では、公共事業も下方修正されているのですが、これは過去に遡ってデータを修正した結果として、伸び率が変わってしまったものと考えられます。
筆者はこのコラムで、いかにエコノミストの予想が当たらないのかエラそうに指摘しているワケですが、実は筆者も今回は上方修正されると予想していましたから、やはり大ハズレでした。筆者はエコノミストではありませんから、GDP予想が専門ではありません。しかしながら、予想を外してしまったことは事実です。
やはり公開前に得られるデータだけから、完璧にGDPを予測するのはかなり難しいようです。特に今のように、状況が複雑な時は尚更です。エコノミストの予想は、そもそも、このようなものであることを前提に付き合った方がよさそうです。