米国では、原油安によってガソリン価格が大幅に下落し、消費が活発になっているようです。日本でも、ガソリン価格は値下がりしているのですが、それほど大きく下がった印象はありません。その理由は、ガソリンの価格に占める税金の割合にあります。
日本のガソリン価格の4割は税金
このところ原油価格は、シェールガス開発による供給過剰と世界経済の不透明感から大きく下落しています。ここ3カ月の間に、原油価格は約25%も安くなりました。
米国の平均ガソリン価格(レギュラー)は3カ月前は1リッターあたり108円程度でした。しかし現在では88円まで値下がりしています。約19%の値下がりですから、原油価格の下落をかなり反映しているといってよいでしょう。
一方、日本の平均ガソリン価格は3カ月前には、1リッターあたり168円、11月末時点では158円となっています。日本はガソリンの絶対値も高いのですが、値下がり幅が小さく約6%しかありません。
この違いが生じる理由は、ガソリンのコスト構造にあります。
日本ではガソリンに対して多額の税金がかけられており、ガソリン価格のうち、原材料である原油が占める割合は4割程度しかありません。残りの4割は、揮発油税や関税などの各種税金、2割は精製・流通コストとなっているのです。原材料コストは4割ですから、ここが大きく下がっても、全体に対する影響は限定的となってしまいます。
さらに日本の場合、円安も影響しています。日銀による追加緩和の発動で、円安がさらに進行しています。原油のほとんどは輸入されますから、いくら原油価格が安くなっても、円安が進むとそれが相殺されてしまうわけです。
これに加えて原油の調達時期の問題があります。日本は石油が取れませんから、石油元売各社は買い付けた石油をすぐに流通には回さず、一定量の備蓄を行います。つまり、今、出回っているガソリンが、原油価格が安くなってから調達した原油で作られているとは限らないのです。
最終的にすべてのガソリン価格に原油安が反映されるまでには、かなりのタイムラグがあると考えた方がよいでしょう。
消費者が原油安の恩恵を感じ取るのは少々難しい
米国は、GDPの7割が個人消費で占められており、個人の可処分所得の大きさは経済成長に直結します。原油価格が下がればガソリン価格が下がり、これは消費者の可処分所得を拡大させます。
原油安は石油業界にとってはマイナスですが、米国経済全体にとってはプラスの影響が大きいのです。原油安が経済にプラスというのは日本も同じですが、ここまで見てきたように、日本の場合には、消費者がその恩恵を実感しにくい構造となっています。
日本では、原油価格の下落が、エネルギーコストの低下や原材料コストの低下につながってきて、はじめて企業におけるメリットが顕在化してきます。企業にゆとりがでてきて初めて給料が上がるといったプラス効果が見えてきますので、消費者がそれを実感できるまでにはかなりの時間がかかるのです。
また企業はエネルギーコストが下落しても、それを賃金にはまわさず、まずは業績向上のために振り向ける傾向が強くなっています。場合によっては、原油安の効果が消費者には到達しないケースもあり得るわけです。
さらにいえば、原油安メリットも円安が過度に進んでしまうと、すべて相殺されてしまいます。円安が進めば輸入物価が上昇してデフレ脱却は進みますが、賃金があまり上がらないと消費者の生活は逆に苦しく感じられてしまうでしょう。
今の状況では原油安の恩恵を直接、消費者が感じ取ることは難しいかもしれません。