このところ消費の落ち込みが顕著になっているのですが、7~9月期のGDP(国内総生産)の数字が押し下げられる可能性が高くなってきました。場合によっては消費税の増税判断に影響を与えるかもしれません。
天候不順が消費低迷の原因?
内閣府は10月1日に開催された経済財政諮問会議において、7~9月期のGDPに関する試算を提示しました。それによると、7~9月期の実質GDP成長率は、前期比で0.2%ポイントから0.6%ポイント押し下げられる可能性があるということです。
数値が押し下げられる理由として政府は、夏の天候不順による個人消費の低迷をあげています。夏場の大雨でコンビニや外食などで客数が減ったことや、気温が上がらずエアコンの売上げが伸び悩んだことが原因というわけです。
個人消費は日本のGDPの約6割を占めており、消費が盛り上がらないと確かにGDPは増えません。
このところ個人消費が低迷していることは小売店の販売状況など各種のデータから明らかなのですが、その理由が天候不順なのかについては疑問の余地が残ります。
その理由は、実質賃金の低下と家計の消費支出減少が続いているからです。今年の春闘では政府からの要請もあり賃上げが実施されました。しかし消費税の増税幅の方が大きく、家計にとっては実質的にマイナスの状態です。しかも中小企業の中には、賃上げが実施されていないところも少なくありません。
また円安の影響で多くの製品が値上げを発表しており、消費者にとってはさらに購買力が低下している状況です。確かに、夏場の天候が良くなかったことは、消費低迷のきかっけとなったのでしょうが、これが決定的要因ではないと考えられます。やはり根底には消費者の購買力低下という問題があると考えた方が自然です。
政府要人の発言から推測されること
高市総務大臣はこの試算について「天候要因が大きい」との認識を示しています。政府としては、恒常的な景気低迷ではないということを強調しておかなければ、消費増税の判断に影響してくる可能性があります。高市氏の発言はこのあたりを意識したものと考えられます。
また甘利経済財政相は、テレビ番組の中で、消費税率の引き上げについて2014年12月1日に判断することも可能という認識を示しました。12月1日というのはGDP推計の元になっている法人企業統計が発表される日です。12月8日には、安倍首相が消費税10%増税の判断材料にすると述べていた7~9月期のGDPが発表となります。
甘利氏の発言は、7~9月期のGDPの数値を見なくても消費税引き上げを判断できる可能性を示したものと理解されています。その真意は明らかではありませんが、予算編成が大詰めとなる年末を避け、増税について早めに決断するという選択肢も検討されているのかもしれません。
天候要因が大きく、仮にGDPが落ち込んだとしてもそれは一時的であるという高市氏の発言や、GDPの発表前に増税を判断する余地を残した甘利氏の発言などを考えると、やはり7~9月のGDPはかなり悪い数字である可能性が高いでしょう。同時に、悪い数字であっても、増税を決断することは既定路線になっているような印象を受けます。
政治決断による増税先送りという説もありますが、果たしてどうなるでしょうか?