消費増税後、国内の消費が大きく落ち込んでいることが明らかとなりました。企業の業績も伸び悩んでおり、多くの業界で冬のボーナスは前年比マイナスとなっています。予想されていたことではありますが、しばらくの間、国内消費には逆風が吹きそうです。
前回よりも増税の影響が大きい
2019年10月の小売業販売額は前年同月比7.1%減と大きく落ち込みました。9月の販売額は駆け込み需要があったことから9.2%増となりましたが、その反動で消費を一気に控えたようです。前回、消費税が増税された2014年には、増税の前月に11%増となり、増税後に4.3%減でしたから、今回の方が増税による影響が大きいということになるでしょう。
本来、消費税というのは、それほど景気に影響を与えるものではありません。政府が徴収した税金は政府支出になりますから、増税によって国民の所得が減るわけではないからです。諸外国では消費増税が経済成長の妨げになったというケースはほとんどありません。
しかしながら、経済の基礎体力が弱く、消費が弱体化している環境で増税を行うと、消費者の心理が一気に冷え込み、消費が大きく抑制されることがあります。前回の増税時もそうでしたが、今の日本はまさにそのような環境といってよいでしょう。
特に今回の増税は、悪いタイミングが重なっています。米中貿易戦争の影響で日本企業の業績が大きく落ち込んでおり、冬のボーナスは製造業を中心に軒並みマイナスになっています。さらに困ったことに、2019年に入ってから、実質賃金のみならず名目賃金もマイナスになる月が増えており、家計がさらに苦しくなっている状況です。
名目賃金もマイナスになる月が増えている
これまでの数年間は、名目賃金は上がっているものの、それ以上に物価が上昇してしまうので、名目値から物価上昇分を差し引いた実質賃金はマイナスが続いていました。しかし、この数字はあくまで実質であり、物価が上がったとはいえ、実際にもらえる賃金の額もそれなりに上昇していたのです。
ところが2019年は名目賃金がマイナスになる月が多く、本当に給料が減った人が多いことを示しています。早期退職によって、高年収だった人が会社を辞めて年収が下がったことや、企業内で役職定年(一定以上の年齢で高い役職についていない場合には管理職から外す仕組み)が強化されていることなどが主な理由と考えられます。
物価が上がって購買力が低下する影響も大きいですが、給料やボーナスの額面上の金額が減ることは、消費者の心理に極めて大きな影響を与えます。賃金が下がっているという現実は、当分の間、消費に悪影響を与えるでしょう。
2020年は、昨年まで大企業のみが対象だった残業規制がいよいよ中小企業にも適用されますし、同一労働同一賃金の導入によって、各種手当の廃止に踏み切る企業もあるようです。これらはすべて労働者の所得減少につながりますから、やはり消費にはマイナスです。東京オリンピックの効果も限定的ですので、2020年は今年と同様、かなり厳しい状況が続くでしょう。