前編では、アマゾンが荷物を指定場所において配達終了とする「置き配」の普及に本格的に乗り出したという話をしました。置き配は利用者からは絶賛する声が上がる一方、盗難などのリスクがあるとして反対している人も多く、置き配に対する反応は真っ二つです。
置き配の利用者は自身で工夫している
では、こうした状況でネット通販事業者はどのような対応を進めてくるでしょうか。結局のところネット通販はビジネスですから、利益を追求する可能性が高く、やはり置き配を拡大しようとするでしょう。一方で、利用者に対して強制はできませんから、おそらく事業者側は、置き配の利用者を優遇する可能性が高いと筆者は考えています。
置き配のやっかいなところは、利用者を選ぶサービスだという点です。
前回も解説しましたが、日本人は自国について「世界でもっとも治安がよい」と自画自賛していますが、置き配の話になると、「荷物を盗まれたらどうするんだ」「不在を知らせるなんてドロボーに入ってくださいといっているようなものだ」といった意見が続々と出てきます。日本人は自画自賛しているほど、日本の治安がよいとは思っていないようです。
それはともかく、日本では極度に治安が悪いというイメージのある米国(筆者は米国についてそれほど治安の悪いところだとは思っていませんが)で、これだけ置き配が普及しており、目立ったトラブルがないことを考えると、日本で置き配を進めても、多数の盗難が発生するとは思えません
しかしながら、やはり少しは気になるのも事実ですから、積極的な置き配の利用者は、個人でいろいろな工夫をしているのが実状です。
自身で大型のプラスチックボックスを用意し、カギが開いた状態の南京錠を置いておき、配達員に対して「荷物を入れたらカギをしてください」とメモを残している人もいますし、ビニールシートを用意して、その下に荷物を入れてもらっている人もいます。
また規約上、廊下に荷物をおけなかったり、メーターボックスがないマンションでも、管理組合と交渉して、窓の下やドアノブに袋をぶら下げることを許可してもらった人もいるようです。
事業者による顧客選別が加速する?
さらに言えば、100回に1回程度の盗難はやむを得ないとして、コストとして処理できるかどうかという、物事に対する価値観も影響してくるでしょう。
つまり置き配というのは、こうした工夫ができる人とできない人で、サービスを利用できるかどうかが変わってくるものなのです。先ほど、置き配は利用者を選ぶサービスだと述べたのはこうした理由からです。
事業者にとって見れば、こうした工夫をしてくれる利用者は、クレームもなく非常にありがたい顧客です。事業者は、こうした顧客に対しては、ポイントやキャンペーンなどで優遇措置を実施する可能性が高いでしょう。置き配の利用者はちょっとした工夫を凝らしたり、ある程度の割り切りを行うことで、時間を最大限有効活用できるようになり、しかも事業者から優遇も受けることができます。
筆者は、近年、日本で顕著となっている「サービス利用者は事業者にいろいろと要求すべきではない」という風潮は好きではなく、消費者は堂々と事業者に要求してもよいと思っています。しかし、「消費者は謙虚になるべきだ」という近年の風潮が正しいのであれば、置き配の積極利用者を事業者が優遇することに対して不満を言うのはアンフェアということになるでしょう。