経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 社会

2020年、正社員サラリーマンの年収が大きく下がる?

 ここ数年、物価が上昇しているにもかかわらず、賃金が上がらないため生活が苦しくなっている人が増えていますが、来年は正社員サラリーマンの年収がさらに下がりそうな状況です。企業の業績が悪化していることに加え、2020年から同一賃金同一労働が導入されるからです。

本来は非正規社員の待遇を向上させるべきだが・・

 米中貿易戦争の影響で中国経済が失速したことから、2020年3月期の企業業績は減収になるところが多いと予想されています。冬のボーナスは前年比マイナスだった業界も少なくないですが、2020年の春闘もこの業績がベースになりますので、大きな賃上げは見込めないでしょう。

 こうした経済環境に加えて、2020年からは同一労働同一賃金が導入されることが決まっており、場合によっては、これが正社員のさらなる年収引き下げの要因となります。

 同一労働同一賃金は、これは同じ仕事をしている社員については、原則として待遇格差を設けてはいけないというもので、企業は待遇格差の是正に取り組まなければなりません。日本では非正規社員の賃金は同じ仕事をしている正社員よりも大幅に安いですから、本来であれば、非正規社員の待遇改善という形で両者の格差を縮小するのがスジです。

 実際、派遣社員などは年数に応じて昇給となる可能性が高く、一部の非正規社員は2020年以降は待遇が大幅に向上します。しかし、非正規社員の待遇改善だけで両者の格差を縮めようとすると、企業にとってはかなりのコストアップとなります。
 本来、あってはならないことですが、企業によっては正社員の待遇を下げるという形で、同一労働同一賃金を実現するところが出てくる可能性が指摘されているのです。

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各種手当がターゲットに?

 日本では労働法制上、企業の一方的な都合で賃金を引き下げることはできませんが、給料に追加して支払われている各種手当については、微妙な状況です。手当に関しても一方的に不利益となる減額は認められていませんが、手当に関する社内規定を見直し、結果として人件費総額が減るという形で平均年収が下がる可能性は十分に考えられるでしょう。

 日本企業では昇給を見送る代わりに手当の増額で労使間が妥協してきたというケースが多く、一部の手当については、社員間の待遇格差につながっています。同一労働同一賃金の導入にともなって、正社員と非正規社員の待遇格差を無くすため、すでに手当見直しをスタートした企業もあります。

 また2020年からは働き方改革の残業規制が中小企業にも適用されますから、一部の中小企業では残業がなくなる代わりに、年収が下がる社員が増えることになるでしょう。

 一定の年齢に達した段階で高い役職に就いていない社員を管理職から外す、いわゆる役職定年を強化する企業も増えていますから、これも賃金を下げる効果を持ちます。2019年に続いて、2020年も賃金という面では厳しい状況が続きそうです。

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