米国の投資銀行であるゴールドマン・サックスが、日本においても消費者を対象とした銀行業務に参入する方針であることが明らかとなりました。近年、フィンテックの進展によって商業銀行のあり方が大きく変貌していますが、これに伴ってプレイヤーの顔ぶれも大きく変わることになりそうです。
ゴールドマンは徹頭徹尾、投資銀行だったが
ゴールドマン・サックスといえば、米国を代表する伝統的な投資銀行であり、企業の資金調達支援などを主な業務としてきました。これに対してシティバンクやチェースといった会社は消費者を相手にする商業銀行であり、両者は明確に区分されてきました。
しかし金融業界も合理化が進み、チェースも今では投資銀行であるJPモルガンと合併しており、総合サービスを提供する金融機関に生まれ変わっています。近年は、フィンテックの台頭によって、従来型金融機関の立場がさらに危うくなってきました。投資銀行であれ商業銀行であれ、新しい時代に対応できないと生き残れないという危機感が高まっているわけです。
こうした中、徹底的に投資銀行業務にこだわってきたゴールドマンも2016年に「マーカス」という消費者向け融資サービスに乗り出しています。同社では日本においても、マーカスの事業拡大余地があると判断し、日本でのサービス提供に向けて準備を進めているとのことです。マーカスは同社の創業者の名前ですから、かなり力が入っているとみてよいでしょう。
個人向け金融サービスの地殻変動が始まった
かつての日本では、シティバンクやHSBC(香港上海銀行)といったグローバルに展開する商業銀行が、個人向けサービスを展開するため大きな店舗を構えていました。しかし日本の国際的な地位の低下や、日本人の経済活動のガラパゴス化が進んだことから、両行とも個人部門は日本から撤退した状況にあります。
ここにゴールドマンが新規に参入してくるわけですが、同社が対象とする顧客は、かつてシティやHSBCが対象としていた富裕層ではありません。マーカスの主な顧客は若年層を含む一般消費者ですから、日本でも同様に所得がそれほど高くない人がターゲットになると思われます。
ゴールルドマンは良い意味でも悪い意味でも、プライドの高い会社で、伝統的な投資銀行業務に徹底的にこだわってきました。その会社が、まったく別の顧客層を相手に、商業銀行業務に乗り出すわけですから、これは大きな変化といってよいでしょう。
日本のメガバンクも、フィンテックの台頭を前に、前代未聞の大リストラを敢行しています。一連の動きは、個人向けの金融サービスというものが根本から変わり始めていることを象徴しているといってよいでしょう。