経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 投資

長期金利と名目GDP成長率はおおよそ一致する

加谷珪一の金利教室 第14回

 経済がうまく回っていると、GDP(国内総生産)は一定割合で成長を続け、それに伴ってマネーの需要も一定のペースで増え続けることになります。中央銀行はこのペースがうまく維持されるようマネーを供給していきますから、適切に経済成長している社会では、経済の拡大ペースに合わせて、適度にインフレが進むことになります。

良いインフレと悪いインフレ

 世の中では、良いインフレ、悪いインフレという議論が交わされることがあります。インフレは、モノに対して貨幣の価値が下がっていることを意味しているだけでから、それ自体に意味はありません。

 しかしGDPの数字が大きくなると、取引量が増え、必要となるマネーの量も増えるので、マネーには稀少価値が出てきます。その結果、金利は上昇傾向を強める結果となります。また、こうした環境では物価が上がると皆が予想するので、お金を貸す人は、将来、返済された時に損をしないよう、金利を高く設定することになります。

 いずれにせよ、景気が順調に拡大している時には、適度なインフレが発生しているので、こうした状況のことを俗に良いインフレと呼んでいます。

 本コラムでは何度か言及していますが、物価上昇率と金利には密接な関係があります。景気がよいと適度なインフレが発生するということは、言い換えれば、経済が安定的に成長している時には、GDPの成長率と長期金利は同じような動きを示すと考えてよいでしょう。

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長期金利と名目GDPの成長率は比例する

 現実の経済もほぼ理論通りに動いています。日本の長期金利(10年物国債)と名目GDP成長率は、上下のブレはあるものの、ほぼ一貫して同じ動きを見せています。

 1970年代はオイルショックなどによるインフレが進んでいた時代であり、名目GDPの成長率は10%を超えていた年もありました。金利も多少乱高下しましたが、こうした状況を織り込み、おおよそ8%台程度で推移しています。

 その後、成長率の低下と共に、金利も低下し4%台となりますが、途中、バブル期には成長率が一時的に回復しています。この時には金利も一時、8%台を回復していました。しかし、バブル崩壊後は、一気に成長率の低下が進み、これに合わせて金利も2%台まで落ち込んでいます。

 ちなみにバブル崩壊直前に株式を売って、その代金で国債を購入した投資家は、株式市場が崩壊する中、長期にわたって8%もの金利を享受することができたわけです。投資はタイミングがすべてというのは、こうした事例からもよく分かります。

 バブル崩壊後は、金利もGDPも低空飛行を続け、最終的には量的緩和策によってゼロ金利になってしまったことは、皆さん、よくご存じの通りです。

 過去の推移を見る限り、長期金利が名目GDPにおおよそ一致するというのは、普遍的な法則とみて差し支えないでしょう。この基本原則はあらゆる局面で役に立ちますから、よく覚えておいてください。

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