経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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リターンを確保してリスクだけを減らす(ポートフォリオ理論 その2)

加谷珪一の投資教室 第26回

 前回は、預金、債券、株式のリスクとリターンについて説明をしましたが、これらの商品を組み合わせた場合、リスクとリターンの関係はどうなるのでしょうか。また同じ株式でも、複数の銘柄を組み合わせるとリスクとリターンはどうなるのでしょうか。このあたりを整理したのがポートフォリオ理論です。

複数商品のリスクとリターンを計算する

 投資をする際、1つの籠にタマゴを盛らない方がよいというのは、よく言われていることです。リスクとリターンの関係が明確にわからなくても、1つの商品に賭けるというのは不安に思う人がほとんどでしょう。

 適切なバランスで商品を分散させればよいということになりますが、単純にハイリスク・ハイリターンの商品とローリスク・ローリターンの商品を組み合わせればよいというわけではありません。

 こうした問題を解決する手法がポートフォリオ理論です。この仕組みを使えば、期待リターンを確保しつつリスクを減らせるような組み合わせを見つけ出すことができます。

 以下のような商品があったと仮定しましょう。

 A商品:リターンが 5%でリスクが10% (割合:60%)
 B商品:リターンが10%でリスクが25% (割合:40%)

リターンは2つの商品のリターンを平均すればよいので簡単です。最終的なリターン=(Aのリターン×Aの割合)+(Bのリターン×Bの割合)になりますから、計算すると7%になります。

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リターンは同じでリスクを減らすことができる

 一方、リスク(つまりブレ)はリターンのように単純に平均を計算して16%とするわけにはいきません。「ブレの小さい商品とブレの大きい商品を組み合わせてブレを中くらいにしよう」という考え方は同じですが、計算は少し複雑になります。

 計算式の詳細は割愛しますが、相関関数という数式を使うところがポイントです。相関関数は、+1から-1で表されるもので、プラスは同じような値動きをするという意味になり、マイナスは逆の値動きをするという意味になります。
 相関係数が1だった場合には完全に同じ値動きとなり、-1の場合には完全に逆、0は相関性なしということを示します。つまりAの商品が動いた時にBの商品がどう動くのかを数式で示したわけです。

 AとBの商品について、相関係数が0.5だった場合、2つをミックスしたリスクは14%となります。2つは同じような動きをしますから、リスクは中間となります。しかし相関係数がマイナス0.5だった場合には、両者は逆の動きをします。ミックスしたリスクを計算すると約8.7%と計算されます。

 同じような動きをする商品を組み合わせた場合と比較してリスクが大幅に減っていることが分かると思います。ここで大事なことは、両者を組み合わせた時の期待リターンは同じということです。リターンが同じなのにリスクだけを減らすことができました。これがポートフォリオ理論を用いる最大の理由です。

 もちろん、ここまでリスクを綺麗に消せる組み合わせはなかなかありません。実際には、株式と債券、商品などをうまく組み合わせ、リターンを落とさないようにして、リスクをできるだけ低くする最適な組み合わせを模索するわけです。ここがポートフォリオを策定する人の腕の見せ所となります。

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