加谷珪一の知っトク経営学 第7回
【経営戦略論を構成する3つの要素】
経営学は、現場での作業をどう標準化するのかというところからスタートし、やがて幅広いマネジメント手法に拡大していきました。
また、マネジメントを徹底させるためには、組織をどうデザインすればよいのかという観点から組織論が生まれ、その組織を形づくる根幹部分として戦略という概念が登場してきました。
競争戦略、ドメイン戦略、そして資源戦略
経営学にはその後も、様々な視点が加わり、多くの体系が出来上がってきましたが、基本的な流れとしては、戦略論と組織論というものがベースになっています。
戦略論はその後、競争戦略、ドメイン戦略、資源戦略という3つに分化していきます。
競争戦略は、他社との競争がどのようなメカニズムで発生するのか、そして競争に打ち勝つためには、どのような手法が重要なのかを分析するためのものです。
競争戦略は、ビジネス誌などにもよく登場する言葉ですし、何より他社との競争という非常に分かりやすい分野を対象としていますから、多くの人が目にしているでしょう。
ビジネスは基本的にライバルとの勝負です。極論を言えば、成果の絶対値は問われません。その局面でライバルとなっている相手に勝つか負けるかがすべてとなりますから、競争戦略はもっとも重要な概念ということになります。
しかしながら、ただ競争するだけでは合理的とはいえません。自分はどういった領域で戦うのかについて考えることも重要ですし、自分がどんな資源を持っているのかについても把握しておく必要があります。前者をドメイン戦略、後者を資源戦略と呼びます。
まずは事業領域を定めることが重要
企業はまず、自社がどのような事業領域で戦うのか明確にしておかなければなりません。この部分がしっかりしていないと、何をするのかはっきりしないまま、事業を進めてしまうことにもなりかねません。経営学におけるドメイン戦略は、事業領域を定めるために存在します。
ドメイン戦略と並んで重要なのが資源戦略です。
自社の事業領域は好きなように決めればよいというわけではありません。自社持っている経営資源というものに依存するからです。
営業というリソースを持っていないのに、事業ドメインを販売に置くことはあまり現実的ではありません。しかし、戦略上、自分が持たないリソースがどうしても必要ということであれば、何としてもそれを獲得する努力が求められるでしょう。その意味で、資源戦略とドメイン戦略は平行して進めていくべきものです。
教科書的には、まず事業領域をしっかり決め、自分が持っているリソースをどう配分するのかを考えていきます。場合によっては、リソースの保有状況に応じてドメインを変更するということもあり得るでしょう。
そして具体的にどのような競争を行い、ライバルに差をつけるのか考えていきます。一連のプロセスが経営戦略立案の実務とにほかなりません。各経営戦略の具体論ついては次回以降で説明していきます。
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