加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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身近な人から奪うのか、広く薄く集めるのか?

 

 お金の稼ぎ方にはいろいろな種類があります。
 どうやってお金を稼ぐかという話は世の中にたくさん存在するのですが、ここでは少し視点を変えてみたいと思います。それは、どうやって稼ぐかではなく、誰から稼ぐかということです。

お金儲けはゼロサムゲームか?

 お金を稼ぐという行為には、少なからずゼロサムゲーム的な要素がつきまといます。ゼロサムゲームとは、誰かが得をすると、誰かが損をしているという状況のことを指します。つまりお金の奪い合いです。

 もっとも、経済が拡大してくれば、全体の富が大きくなるという現象が起きますから、奪い合いにはならないという考え方もできます。しかしその中では相対的な稼ぎの違いというものがあるので、やはり奪い合いという側面があることは否定できないでしょう。

 ここで重要なのは、誰からお金を奪った方が合理的なのかという点です。

 市場メカニズムがしっかりしている国の場合には、不特定多数から薄く奪った方が合理的で、その方が圧倒的に儲かります。Googleなどはまさにその典型で、1クリック何十円という広告料を積み上げて、何兆円もの売上げにしているわけです。

 一方、市場メカニズムがあまり発達していないところでは、身近な人から奪うという方が儲かります。いわゆるブラック企業がその典型ですが、より儲かるビジネスモデルを考えるよりも、社員をいじめて搾取した方が、てっとり早いわけです。

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 身近な人から奪うというやり方は、広く薄く集めるやり方に比べると、実はあまり儲かりません。お金のない人からさらに搾り取ったところで、その金額はたかが知れているからです。
 しかし、とりあえず弱い人から奪えばよいので、実行するのは容易です。とりあえず人よりちょっと儲けられればよいという、志の低い人はこうしたやり方に走りがちです。

日本はどちらかというと搾取型の国

 ここではブラック企業を例にあげましたが、この仕組みは自体はブラック企業に限ったものではありません。残念ながら、日本はどちらかというと、身近な人から奪うことが中心の社会といえます。いまだに合理的な市場メカニズムが確立しているとは言い難い面があるのです。

 公共工事など官が発注する仕事はまさにこの典型で、政治力のある強い人が、最初に仕事を受け、立場の弱い下請けに仕事を丸投げして利益を抜いていきます。

 最終的に実務を担当する人のところには、ごくわずかしかお金が回ってきません。企業も同じで、いまだに重層的な下請け構造を維持しています。
 このような強固な元請け、下請けという形態は先進国では日本にしかないものです。

 確かに途上国にあるような非人道的な搾取は行われていませんが、皆がより大きくビジネスをしてパイを拡大させることよりも、身近な人で、自分より下の人を見つけてきて満足する傾向が強く、ビジネスの世界でも従属的な人間関係がよく見られます。
 日本企業の利益率が低いのもの、おそらくこのあたりに原因があると思われます。

 豊かで自立した生活をするためには、こうした負のネットワークから抜け出す必要があります。ブラック企業の横行や硬直化した下請け構造は、制度的な面でもたらされている部分もありますが、最終的には一人一人の意識に依存しています。

 法定賃金以下で、過労死するまで働かなければならない仕事をするのはまったく非合理的ですが、日本では秩序を乱すことは「悪」と教育されてきますから、それに対してノーということに対して罪悪感を持つ人も多いのです。

 こうした土壌そのものから改善していかないと、ブラック企業の問題は解決することは難しいでしょうし、また、持続的な経済成長を実現することも難しいでしょう。

 - ビジネス, 社会, 経済

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