2014年5月12日、財務省は2013年度の経常収支が昨年より大幅に減少し7899億円になったと発表しました。日本は経常赤字に転落しつつあるといわれているのですが、これは何を意味しているのでしょうか?
日本は貿易より投資で儲ける国に
国の最終的な収支を示す経常収支は、簡単に言うと貿易収支に所得収支(投資による収益)を加えたものです。要するに貿易で儲けた額と投資で儲けた額の合計です。
日本は製造業の国だとよく言われます。確かに日本は工業製品の輸出で国を支えてきましたから、日本の貿易収支は何十年もの間、黒字でした。
しかしバブル崩壊後からは少し状況が変わってきています。製造業があまり儲からなくなる一方、これまで儲けたお金を海外に再投資し、その利子や配当をもらえるようになってきたのです。
10年ほど前から、すでに投資による利益が貿易黒字を上回っており、2011年以降は、とうとう貿易収支が赤字に転落してしまいました。現在は貿易による赤字を、投資による利益がカバーすることで、ギリギリで経常収支を黒字に保っている状況なのです。
特に昨年から円安が急激に進んだことで、エネルギーの輸入額が大幅に増えました。また、日本から工場が海外に移転したことで、日本はより多くのモノを輸入するようになっています。これによって貿易赤字はさらに拡大しています。
経常赤字というと、非常に良くないイメージがありますが、経常収支の状況がその国の経済成長に直接的な影響を与えるわけではありません。経常赤字がその国の経済にどのような影響を与えるのかは、その国が置かれている状況によって異なります。
例えば米国は毎年4700億ドル(約48兆円)にものぼる莫大な経常赤字を垂れ流していますが、それを上回る資金の流入があるため、経常収支の赤字は大きな問題にはなっていません。
経常赤字化は経済の仕組みが変化した証拠
日本の場合、これまで経常黒字だったものがここ数年で一気に赤字に転換しようとしています。つまり経済の仕組みが急速に変化しているということですから、それがもたらす影響は大きなものになってくるでしょう。
日本の経常赤字転落は、モノ作りの国からサービス業の国へと経済が転換していることの象徴なのです。これまで製造業が吸収していた雇用は、今後、徐々にサービス業にシフトしていく必要があります。こうした経済の転換がうまくいかないと、経済成長に対してマイナスの影響もあり得るでしょう。
経常赤字そのものがいけないのではなく、経済の体質転換がうまくいかないと悪影響が出てくるのです。
また経常収支が赤字になるということは、海外からの資金流入が増えることを意味しています。日本の市場の透明性を高め、良質な海外資金が入ってくるための仕組み作りも必要となります。
日本の経済や社会はまさに過渡期に差し掛かっているのです。