自動車業界で相次ぐM&Aが示す「クルマはタダの箱」という現実

 欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とグループPSA(プジョー・シトロエン)が経営統合で基本合意しました。実はFCAは今年5月、仏ルノーとの合併について協議したものの、実現しなかったという経緯があります。トヨタ自動車も、スズキ、マツダ、スバルと次々と競合他社を傘下に収めています。

 自動車は高度な技術に支えられており、ゲームのように次々とM&A(合併・買収)の相手を探すことはできないというのがこれまでの常識でした。しかし、自動車業界は100年に1度という変革期を迎えており、これまでの常識は通用しなくなっています。

自動車メーカーは簡単には合併できないはずだったが・・・

 FCAはイタリアのフィアットと米クライスラーの合併で生まれた企業で、「ジープ」や「アルファロメオ」などのブランドが有名です。PSAはシトロエン、プジョー、オペルなどで構成されています。

 2018年におけるFCA販売台数は480万台、PSAは390万台ですから、単純合計すると870万台の販売台数となり、トップ・グループに近づくことになります。

 FCAはこれまでもM&Aを模索しており、一時は仏ルノー(つまりルノー・日産連合)との合併について協議していました。この合併はフランス政府が難色を示したことで破談となりましたが、ほとんど時間を置かずに今度はPSAとの合併に邁進しました。

 自動車産業は多くの技術体系の集合体であり、これらの技術をスリ合わせるのは容易ではありません。したがって、他の業界のように規模拡大を目指すため、次々とM&Aを実施するのは簡単ではないといわれてきました。ところがFCAは、こうしたM&Aを次々と繰り出しています。

 ここまで動きが派手ではありませんが、トヨタも、スズキ、マツダ、スバルを次々に傘下に収めるなど、技術体系の違いを超えて、規模拡大に邁進している状況です。

IMAGE CP FCA PSA

これまで魅力的なクルマを作ることができたメーカーも例外ではない

 自動車業界のこれまでの常識が崩壊した最大の理由は自動運転技術とEV(電気自動車)です。

 自動運転技術が確立すると、基本的にクルマは誰でも乗れるようになります。クルマの運転には技能が必要でしたから、「運転を楽しむ」という概念も発達してきましたが、目的の場所に誰でも行けるのなら、クルマは究極的にはただの箱になります。

 EVシフトが急速に進んでいることもこの動きを後押ししています。

 EVの基幹部品はバッテリーとモーターですが、これらはコモディティ製品であり、EV時代には自動車の価格が大幅に下がる可能性が高いといわれています。こうした産業構造では、極限までコストメリットを追求する必要があるため、単純な足し算としての経営統合に戦略的な意味が出てくるのです。

 少し寂しい気もしますが、クルマはタダの箱になる、というのがこれからの自動車業界の常識となるでしょう。自動運転や各種サービスとうまく結び付けられないメーカーは、これまでどれだけ魅力的なクルマを作ることができていても、今後は容赦なく淘汰されてしまう可能性があります。